静岡県選手権2011開催リポート・本編


 第一部:大会間近

その1.お気楽な部外者

この日は、静岡県選手権2011からキッカリ1週間前の2月6日(日)。
愛知県名古屋市にて「愛知県選手権2011」が開催されていました。

静岡県選手権2011の開催まで後2週間に迫った2月1日(火)の時点で申込者は10人に満たず、
この日になってもその状況に大した変化はありませんでした。
そこで、選手権の観戦がてら会場に足を運んで参加者を直接募ることにしました。
もちろん、顔なじみの名古屋の常連さん達に3月から代表が交代する経緯を直接
説明しておきたいというのも大事な理由の一つです。

大会を開催する場合、参加人数に関わらず主催者には責任があります。
そして、大会の中でも特に賞金トーナメントには気を使いますが、それにも増して、お金には代えることができない
「全国大会への出場権」という権利を掛け闘う選手権においては、その主催者の責任はより重くなります。
なぜなら、権利獲得を狙っていつもより増して目が血走っているプレイヤーが多いからです(笑)。

私も昔ほどではないですが、大会に選手として出場するとなると
やはり多少神経質になるものです。

ところが、この日は参加者を荒稼ぎするのがメインの目的ですので(笑)、何一つ重圧がないお気楽な代表鈴木は、
それが高じて、会場に入ると同時にちょとふざけてニーハオと言って入ろうかなと思い付きました(笑)。(とんでもない輩です。)

所用をすませて夕方に会場に乗り込む代表鈴木。
予定通り会場の扉を開けて口を開こうとした瞬間、張り詰めた空気に触れて一瞬にして冷静さを取り戻しました。
なんとみなさん、権利を獲得できるか否かの瀬戸際である、最終局を対局中だったのです。
いやはや、もう少しで日本チェス界から追放されるところでした(笑)。
これもひとえに、ちょうどこちら向きで真剣に対局していた藤澤さんのオーラのお陰であることは間違いないでしょう(笑)。
まったく、そもそも真剣勝負の場に乗り込んで「ニーハオ」だなんて・・・、こんな下らないことにも反省です。
果たしてこんな人間に選手権のTDが務まるのでしょうか?今から心配で仕方あません。

気を取り直した代表鈴木は、観戦しつつも対局が終わった方に順に声をかけ、翌週の静岡県選手権2011の参加者を募ります。
倍井さんとの対局を終えて検討中の袴田さんにも声を掛けます。

「袴田さん。今年も静岡県選手権にぜひ来て下さい。(代表鈴木)」
「吉祥寺(の五拾傑戦)へ行きます。(袴田さん)」

・・・気を取り直して他の人にも声を掛けます。
岩城さんにも声を掛けると参加しますとのお返事。

「すごいですね。今回は女性が3人も出場しますね。(岩城さん)」
「3人?(今話している)岩城さんに(今回見学に来ている)中尾さんに・・・2人じゃないですか?(代表鈴木)」
「ヒメナさんも入れると3人でしょ。(岩城さん)」

・・・決して忘れていた訳ではありません(笑)。

いずれにしても、「どうしようかなぁ、多分行くと思うけど。」と言っていた木田さんと木下さんを、表彰が終わったころには
「参加確定でHPに掲載しておきますから。(代表鈴木)」と、半ば強引に出場を確定させ(笑)、名古屋CC代表の堀江さんを始め、
多くの参加者を荒稼ぎして満足げに帰る代表鈴木でした。

その2.ダブルブッキング

愛知県選手権2011で参加者を荒稼ぎして帰って来た代表鈴木に、更なる吉報が舞い込んできました。
なんと、東北大学ホワイトナイツチェスサークルの三村さんが、仙台からわざわざ参加してくれるというではありませんか!!
この数日前に申し込みをしてくれた松戸CCのみとじんさんこと神田さんと代表鈴木も含め、ここにチーム選手権でそれぞれの
チームの主役として(ここはそういうことで勘弁して下さい(笑))火花を散らした3人が再び一堂に会することになりました。

とにかく、三村さんと何度かメールをやりとりしていると、2泊3日で来るとの事。
それならばと、2年前に東北選手権に参加した際に松島へ連れてってくれた仙台CC代表の高橋さんの代わりに、三村さんに
浜松を案内してあげようと、代表鈴木はガイドを買って出ました。

最終的な三村さんからの連絡には、12(土)10:33浜松着の新幹線で来るとのこと。安請け合いする代表鈴木。
一方、愛知県選手権2011で会った高安さんに11:04着のひかりで行く旨、念を押されていた代表鈴木。

なんと、とある会場ばりのダブルブッキング(ちょっとしつこいですが)をしていしまいました。
・・・決して、決して忘れていた訳ではありません(笑)。

いずれしても、こちら側は高安先生を昨年と同じ碁会所へ連れて行くというのが元々のメインであり、一方三村さんは観光がメイン
とのことですので、最終的には、一旦三村さんを迎えに行くものの、どこか適当な観光地に置き去りにし(笑)、我々2人が碁に興じて
いる間は勝手に観光してもらうということで落ち着きました。

「観光した後に再びピックアップ→チェス→夕食というプランで異存ありません。(三村さん)」
「三村くんを観光地に置き去りは少しかわいそうな気もするけど、彼がそれでもいいのなら僕はいいよ。(高安さん)。」

というやさしい2人のお陰で無事解決。本当にワガママな男ですみません。

その3.理不尽な連中

時は進んで、大会前日の2月12日(土)。
いろいろありましたが、この日は昨年と同様に予定通り?!、浜松チェスサークル相談役の高安さんを接待します。

とその前に、まずは10時半に浜松駅北口の送迎レーンで三村さんをピックアップ。
何しろ30分しかタイムラグが無い為、話もそこそこに目的地へ向けて出発します。
それでもせめてもの義理で、恐らくこのあと三村さんが立ち寄るであろう浜松城と犀ヶ崖(さいががけ)古戦場の前を通り、
目的の蜆塚(しじみづか)遺跡に着くなり、この理不尽な男の犠牲になった三村さんを置き去りにして(笑)、一路浜松駅
へ舞い戻りました。

11時、無事高安さんをピックアップ。
ざるそばが好きだという高安さんを連れて、郊外のそば屋へ行きました。11時開店のこのお店に11半前着いた際には、
車は一台しか止まっていませんでしたが、食事を終えて帰る頃には駐車場は満杯でした。

続いて、昨年と同じく「浜松囲碁センター」へ行きました。
代表鈴木は、半年以上行っていなかったので久し振り&懐かしむ間もなくお別れの挨拶の為に、
高安さんは、昨年代表鈴木と共に同時対局を打って頂いた先生にリベンジするべく足を運びました。

先生に対しては、昨年と同様に代表鈴木は7子(絶対に少ない)、高安さんは5子(絶対に多い)を置き、
代表鈴木は熱い激励を浴びましたが、高安さんは、「5子もいらなかったね。」とのお言葉を頂く程の
完勝で、見事にリベンジを果たしました。
他にも代表鈴木は馴染みの客と対局し、ことごとく熱い激励を浴び、
高安さんもいつもとは違う相手との碁を満喫されました。

16時半、事前の打ち合わせ通り、再び浜松駅北口の送迎レーンで三村さんをピックアップし、3人で翌日の会場へ向かいました。
それにしても、旅行スケジュールを完璧にこなした三村さんの真面目さには感服しました(笑)。

場所は移ってパレットの交流ルーム。ここはミーティングルームAとBの入口にあたる部分で、大きなテーブルが何台か置いてあり、
登録団体だけでなく一般の方も使える場所です。(いや、のハズでした。)
ここで代表鈴木はちょっとした用事があったので、とりあえず15分+10秒のタイムコントロールにて、高安さんと三村さんの2人で
対局してもらうことにして会場を後にしました。
用を済ませ、「大会前日に火花を散らす2人」的な写真を撮ろうと足早に戻った代表鈴木でしたが、残念ながら対局を終えたのか、
2人は談笑している最中でした。

「結果はどうでした。(代表鈴木)」
「途中でストップがかかった。(2人)」

とのこと。確かに局面は、シシリアン・シュペシュニコフのオープニングを終えて、さあこれからという段階です。
状況が飲み込めない代表鈴木。さらに問いただすと、ここ(交流ルーム)でゲームをするのは禁止だとのこと。

「えっ?でも去年ここで僕と高安さんがやった時は、何も言われなかったじゃないですか。(代表鈴木)」
「せやけど、事務局の人が来て、『ここでゲームをすることはできません。』って言われたんや。(高安さん)。」

2人で黙ってチェスをしているのがダメで、チェスボードを広げて談笑しているのはOK。何と理不尽な要求でしょうか。
代表鈴木も腹が立ったので直接抗議に行きましたが、例え登録団体でも部屋を借りてないから使えないとの説明でした。
何でも、最近県から御指導(一応県の施設なので)があって、部屋を借りている団体以外は打ち合わせ以外は使用禁止だとのこと。
それでも、これまでHCCが大会で使用する際に、何度も検討用に使って何も言われなかった点を指摘すると、
「その場合は、部屋を借りている団体が、中に収まりきれなかった人達に提供している。という説明ができます。」
とか言うわかったようなわからないような回答。とにかく、「他の方に迷惑がかかる。」の一点張りで、もういいやと思った代表鈴木は、
仕方なく2人の元へ戻りました。

(これじぁ全然交流ルームじゃないじゃん)と思いましたが、仕方なくストップがかかった局面を前に3人で談笑していると、
さらに事務局の人が来て、チェスボードすらしまわされました。

「対局しているより2人で喋っている方がよっぽど迷惑やと思うけどな。(高安さん)」というのはごもっともですが、
「せやけど、部屋を借りてないから使えへんと言うのも一理あるな。(高安さん)」ということになり、さらに
「(さわやかへ行って)どれくらいさわやかなのか体験してみたい。(三村さん)」とのことで、若干腑に落ちませんが、
ここでゴネて翌日検討できなくなってもつまらないということで一致し、とっとと退去しました。
流石に早過ぎるので一旦本屋へ寄った後、当初の予定より少し早めに「さわやか」へGO。

その「さわやか」では、チェスの話を中心に3人で大いに盛り上がりました。
様々な話がでましたが、話題はやはりチーム選手権の話になりました。

我々浜松チェスサークルと東北大学ホワイトナイツチェスサークルは、チーム選手権の最終局にて運命的に激突しましたが、
激戦の上に仲良く引分けに終わりました。特に、ホワイトナイツの三村さんとHCCの久保寺さんの両エースのシシリアンは
大変見ものでした。代表鈴木については三村さんから、
「あの時は鈴木さんの執念を感じました。」
と言って頂きましたが、あれはただ扇子が壊れた?!お陰で(笑)・・・、いずれにしても相手の薄葉さんにはいつかお詫びしたいです。

話は続きますが、その薄葉さんは、今年から就職で長野県へ行ってしまうそうです。
代表鈴木も対局前に会話した際に薄葉さんから直接聞きました。せっかくなのでHCCにも来たいとおっしゃって頂きました。
長野県は、どこであっても隣県とは思えないほど浜松へのアクセスは良くないんですが、ぜひ一度来て頂きたいと思います。
ちなみに、ホワイトナイツは薄葉さんが一人で立ち上げたとのことで、三村さんを始めとする他の団員の方も創設者の薄葉さんが
去ってしまうことを悲しんでいるそうです。薄葉さんには、今度は浜松か名古屋のメンバーとして後輩と相見えてもらいたいですね。

翌日のことを考えて20時頃に解散。

   
さわやかになった三村さん                                さわやかを満喫する3人

まぁ会場やこの「さわやか」での食事も含めて、2人とも真に過去録の世界を体験できたので、
ある意味良かったんじゃないでしょうか(笑)。

その4.ラストサプライズ

2人との時間を満喫した代表鈴木は、家に帰ると同時に大会前最後のHP更新(参加予定者一覧)を終えました。
そのHP更新を終えて少し経った21時過ぎ、体表鈴木の携帯が鳴りました。
(おっ、この時間に電話ということは、参加者がもう一人追加かな?)と期待しつつも携帯の画面を覗くと、
なんと、渡辺暁さんと表示されているではありませんか!!
一体何があったんだろうと思った代表鈴木は、挨拶もそこそこに済ませ、不躾にも「どうされましたか?」と聞いていしまいました。
答えは、大会に出るとのこと。このタイミングで電話してくるんだから当然です。ただ、ここで一抹の不安が・・・

愛知県選手権2011で3.0ptも獲得しながら、タイブレークの関係で惜しくも出場権を逃した高田さん。
遥か仙台の地からわざわ出場権を獲得しに来た三村さん。

他にも全国大会へ出たい人はいるでしょうが、とりあえず彼ら2人が全国へとても行きたがっていることを思い出し、
代表鈴木は思わず尋ねました。
「暁さん、全国の権利は狙っているんですか?(代表鈴木)」
「JCAに問い合わせたんだけど、(JCAの規定で)権利は持っているらしい。(暁さん)」
とのこと。恐らく段位の規定でしょう。段位の上位何名かは、ある程度対局すれば権利がもらえるという
規定が確かあったハズです。FMの暁さんは六段ですので十分でしょう。

ほっとすると同時に早速HPを再度更新しようとする代表鈴木でしたが、ここで一つの悪巧みが思い浮かびました。
現代表の鈴木が開催する大会としては最後なんだから、ここはあえて黙って驚かせてやろうと。
最後ぐらい、何かサプライズがあっても良いんじゃないかという悪巧みであります。
かくして、暁さんを無理やり口止めした代表鈴木は、翌朝高田さんや三村さんが顔を引きつらせながら驚いている様子を想像し、
不敵な笑みを浮かべながら眠りにつくのでした。まったく、人で無しとはこのことです。

後編(大会当日)へ続く


 第二部:後編 大会当日

その1.いざ開戦へ

いつも通り、キッカリ9時に1Fの自動ドアが開きます。
すぐさま他の参加者とエレベーターに乗って5Fの会場へ乗り込みます。
受付で交流ルームを使う為の手続きを終え、ミーティングルームBへ行って慌ただしくセッティング。他の参加者も協力してくれます。
特に倍井さんは、毎回セッティングと片づけ両方とも親身に手伝ってくれます。この場をお借りして感謝致します。

あらかたセッティングを終えた代表鈴木は、既に用意してある参加者名簿を取り出して受付を始めます。
参加費徴収の有無を確認する為には大事な書類です。ところが、ここで代表鈴木に思わぬ落ち度がありました。
名簿を見てうめき声をあげる倍井さん。同じく名簿を見た秋永さんは、
「あれっ?暁さんも参加するんだ。」

それ・・・言っちゃダメでしょう(笑)!!

いやいや、まだこの二人しか気づいていない(きっとそうだ)。とりあえず、シーっと言って口止めしましたが、結局その甲斐もなく
ほどなくして暁さん登場。チェスプレイヤーは闘志を内に秘めるタイプの人が多いので、イマイチ反応がわかりませんでしたが、
みなさんきっと驚いていたことは間違いありません(笑)。

その2.注目の第一局

昨年と同じく、まず代表鈴木が挨拶その他注意点を述べてから大会開始となりました。
ちなみに、暁さんが権利を持っている件は、暁さんの口から直接説明して頂きました。
流石の私も、内緒のまま大会を開始する程イジワルではありません(笑)。

第一局目の注目局は、何と言っても1番ボードのアキラ対決と、8番ボードのアキヤマ対決です。
つまり、ランダムチェスマスターの木下晃さんとノーマルチェスマスターの渡辺暁の対決、そして秋山母子の直接対決です。
残念ながら、他のボードも含めて初戦はレーティング通りの結果となりましたが、いろいろと事件を起こしてくれそうな一日
である予感がします。ちょっとした波乱は、ドロー職人の高安さんが、暁さんの次にレートが高い将照さんと(将照さんがドローに
したという形勢だったみたいですが)引き分けていたくらいです。

全ボード比較的早く終わる中、後は5番ボードのLesselさんと藤澤さんを残すのみとなりました。
そんな中、Lesselさんのご友人の夫婦が袋井(静岡県西部)からお越しになりました。なんでも事前に連絡していただとか。
流石に挨拶等は外の交流ルームでしてもらいましたが、何しろ残り時間2分という状況で懐かしそうに話していたのには
正直ヒヤヒヤしました。なお、試合は藤澤さんの貫録勝ちでした。


みとじんさんと話す代表鈴木

その3.ちゃんと昼食を摂って第二局

今回参加している渡辺暁さんは、この度御自身が手掛けているHPをまとめた本を出版されるそうです。
そこで、チェスに真面目に取り組んでいる三村さんを始めとする東北大学チェスサークルに編集の協力を希望しています。
ということで、代表鈴木が紹介したケバブ屋(ペルシャ料理のファーストフード)で打ち合わせがてら2人で食事されました。

代表鈴木は、例の5番ボード終了後に組み合せを発表し、ちょうど検討を終えた高安さんと食事へ行きました。
といっても余り時間も無かったので、同じフロアの喫茶店で昼食を摂りました。戻ってきた暁さんも含めて3人で談笑。

第二局目もレーティングで考えると別段波乱なし。一応上位ボードだけ振り返ります。

1番ボードの暁さんと堀江さんの対局は、この日の打上げで暁さんが、
「(堀江さんとの対局の中で)今まで一番苦戦した。」
と言っていた通り、私もちょっと見ましたが、中々拮抗した試合でした。
けど、前回浜松の大会で堀江さんと対局した時も同じようなことを言っていたような・・・。
打ち上げ時の暁さんは、その点キッパリと否定していましたが、そこはご愛嬌。

2番ボードの高田さんと倍井さんの対局はドロー。
3番ボードのヒメナさんと三村さんのHCCvsホワイトナイツの対決は、三村さんに軍配が上がりました。

そして、今回の目玉は4番ボードの藤澤さんとみとじんさんの35年振り(前回は郵便チェス)の対決です。
正直、(そんな前からチェスやってたんだ)と思いましたが(笑)、お二人の並々ならぬ気迫には度肝を抜かれました。
なお、この試合の解説につきましては、「みとっぽ参戦記」にお譲りしたいと思います。

その4.負けられない第三局

1日4局の試合の場合、入賞ラインは大体3.0ptです。
つまり、1・2局を連勝した場合は、ここで落とすと次は絶対に勝たねばならず、逆に2.0pt未満のプレイヤーは
ここで負けると入賞の可能性がほぼ消えます。いずれにしても、負けられない一戦です。

この試合も、結論から言うと、ほぼレーティング通りの結果となりました。
細かな試合の解説は、他の参戦記に譲りたいと思います。
とにかく、次は最終局です。

その5.人生の厳しさを教えられた最終局

いよいよ最終局です。
代表鈴木は、最後を盛り上げるために短い挨拶した後、
「それでは運命の最終局、時計を・・・(押して始めて下さい)。」と、言いかけたぐらいのタイミングで、
「ちょっと、すみません。」と、木田さんに声をかけられてスベったのは正直痛かったんですが(笑)、
そんなことは関係ありません。みなさん、全国大会の権利を取る為に真剣なんです。

「人数を把握したいので、仮に権利を取った場合に全国大会へ行く方は手を挙げて下さい。(代表鈴木)」
との問いに対して、高田さん、神田さん、三村さん、飯塚さん、高安さん、倍井さんの上位ボードに座る6名の方が手を挙げました。
全局中半分程がいつもの例会の様な組み合わせになってしまいましたが、これも何かの巡り合わせでしょう。
いずれにしても、この6名は勝って気持ちよく全国大会へ行きたいところです。

この山場の最終局は、時系列に上位ボードを中心に話を進めたいと思います。

時は過ぎ、さあこれからかなというタイミングでいち早く終了した5番ボードの倍井さんとLesselさん。
レート的には倍井さんの方が格上ですが、Lesselさんの笑顔から察するに勝ったのは黒番のLesselさん。
対局前に手を挙げた倍井さんでしたが、人生は中々思い通りにはいかないようです。
一方、初戦で藤澤さんに敗れたものの、その後は負けなしと2.5ptで終えたLesselさん。手は挙げませんでしたが、
朝、建物の外で談笑した際には「I will try.」と言っていたので、恐らく狙っているハズ。他の結果を待ちます。

暫くすると、今度は2番ボードの藤澤さんと高田さんが対局を終えました。表情だけでは結果がわかりません。
組み合せ前、「ドローでも権利が取れそうな気がする。」と弱気な発言をしていた高田さん。
※余談ですが、例えこの一局だけ結果が違ってドローでもタイブレークにより高田さんに権利は回ってきません。
けれども、対局前には「勝って気持ちよく全国大会へ行く。」と堂々と宣言していた高田さん。
一方、「もう弟子の方が師匠より強くなってしまった。」と、その言葉とは裏腹に、相変わらず嬉しそうな藤澤さん。

そして、結果は・・・師匠の貫録勝ち!!
前週の愛知県選手権から一貫して全国へ行きたいと口にしている弟子を容赦なく蹴散らす師匠。
棋譜を見る限り、高田さんの実力からすると不本意な一局だったでしょうが、
「(ドローでもいいやなんて)そんな男に育てた覚えは無いぞ。」と、手や口ではなく、チェスプレイヤーらしくチェスで示されました。
まさに、「全国へ出たいならオレを倒してからにしろ!」と言わんばかりの、これぞ真の師弟愛か!!
この真剣勝負の土壇場で、師匠から直々に人生の厳しさを教えられた弟子でした。

残る上位ボードは、暁さんと将照さんの1番ボード、神田さんと三村さんの3番ボード、そして、飯塚さんと高安さんの4番ボードです。
この時点では、まだ誰が権利を取るかは不透明です。

まず、気になるのは4番ボード。
黒の高安さんは、白の飯塚さんに自陣に入りこまれ、かなり指しにくそうです。ワンポーンダウンは確定か。
そんな中、持ち時間が切迫していた三村さんがドローオファー。神田さんが受け、3番ボードは2人とも2.5ptで大会を終えます。

この時点で2位以上が確定している3.5ptの藤澤さんは、全国にはいかないと明言していますし、1番ボードの暁さんは
権利をもっており、同じく将照さんは「GWが潰れ過ぎる。」との理由で今年は出場しない模様。
(これは4番ボードの結果次第では2.5ptでも十分権利が回ってくるぞ。)と思った代表鈴木は、すぐさま4番ボードへ向かいます。
ところが、局面は白がコネクティッドパスポーンをもっている(黒はポーンなし)ルークエンドゲームという、白圧勝の展開になってました。
(これは流石にドロー職人の高安さんも終わったな。)と思った代表鈴木は、もう興味が無くなったので、他のボードを観戦したり、
事務処理をしたりと別のことをしていました。

しかし、結果はなんとドロー。
代表鈴木が次に気づいた時点では、ピースも無くなって白のポーン一つとなっており、しかも黒のキングがそのポーン頭を押さえて
いるので完全にドローの局面です。

局後の検討では、「エンドゲームの勉強不足です。」と言っていた飯塚さん。それにしてももったいない。
対局前に手を挙げていた飯塚さんは、勝てば3.0ptで堂々の権利獲得でしたが、高安さんから人生の厳しさを教えられました。
流石の高安さんも今回ばかりは、「ドローにするのは得意なんやって。」(チーム選手権での台詞)とは言いませんでしたが、
これはドローにした高安さんを褒めるべきでしょう。ちなみに、高安さんは4局すべてドローという変な記録を作りました。

そして、この時点で、2.5pt中タイブレーク最上位の三村さんの権利獲得が確定。
残るは1番ボードと6番ボード、それに8番ボードです。

この3つのボードはまだまだ長そうでしたので、事務処理をしていた代表鈴木。
すると1番ボードが終わった様子。組み合せ表に結果を記入する暁さん。どうやら勝ったのは暁さんの様です。
ちなみに、今回も棋譜集を作る為、棋譜は複写式にしてあります。対局終了後に受付にあるケースに入れる決まりになっています。
ちゃんと棋譜を置いてから外へ出る暁さん。少し遅れて溜め息をつきながら棋譜を置く将照さん。
その将照さんと目が合う代表鈴木。しばらく代表鈴木の目を見つめる将照さん。何のことだかわからない代表鈴木。

この件を打ち上げ時に暁さんに話したところ、「その気持ちは良くわかる。」とのこと。
何でも将照さんが勝っていたらしいのです。でもまぁチェスは結果がすべてですよ。それはみなさん身にしみておわかりでしょう。
FMから直々に人生の厳しさを教えられた将照さんでした。

その後、20時前にはすべての試合が終わり、最終的に2つ目の権利は神田さんの手に渡りました。

その6.表彰式

大会が終わったらいよいよ表彰式です。
最後まで熱戦が続いた影響か、表彰開始が20時になってしましました。
権利を獲得した4位の神田さん、入賞+権利を獲得した3位の三村さん、負けなしで準優勝の藤澤さん、そして全勝優勝の暁さん。
以上の順番で表彰しました。

そしてここで、朝参加者にサプライズをプレゼントした代表鈴木が、逆にサプライズをプレゼントされました。
白井さんより寄せ書きを頂きました。書いてくれた皆さんどうもありがとう。
流石にこれは公開するかどうか迷いましたが、最後なのでどうか許して下さい。


白井(さん)とゆかいな仲間たちより代表鈴木へ

これに対して、ただ戸惑うばかりで何らコメントできなかったのが唯一の心残りです。
いずれにしても、ちゃんとレベルアップしとかないと戻ってこれない雰囲気なので(笑)、日々精進したいと思います。

最後に、暁さんが今回参加した経緯のネタばらしをしました。
代表鈴木より、「オレが人生の厳しさを教えてやる。」とおっしゃった。と、ウソの参加理由を言って笑いを誘いつつも、
実際にこの最終局において、優勝・準優勝のお歴々を始め本当に人生の厳しさを教えた方々がいるので笑い事ではありません。
まぁでも、最後だから許してね。

また、表彰の途中で全国大会の書類を三村さんへ渡す場面がありました。
最終局から見学に来た白井さんが、三村さんのカメラでその模様を撮影してあげました。
ところがなんと、その書類は実はニセモノでした(汗)。
翌日、大会の書類を整理していた際に、署名入りの書類を発見したことで発覚しました。
なぜなら、代表鈴木は、念のために書類を数部用意していたものの、署名は2つにしか書いた記憶がなかったからです。
メールでお二人に確認したところ、みとじんさんのは署名あり、三村さんのは署名なしとの回答。
4番ボードがドローに終わり、三村さんの権利獲得が確定した際に一度署名入りの書類をお渡ししましたが、
その後、表彰の為に一旦引き取りました。恐らくこの時にすり替わってしまったと思います。まったくとんでもない輩がいるものです。
三村さんには後日正真正銘の署名入りの書類を郵送しました。

と、これは裏話。

そして、暁さんの挨拶に続く、代表鈴木による最後の挨拶として、
「今回、人生の厳しさを味わった方が大勢いると思いますが、ここにいる人(つまり、チェスの大会、特に選手権に参加する様なチェス
プレイヤー)は、どうせチェスを辞めることができない(暴言ですが)おかしな人ばかりですから、終わりなんてないので、また日々精進
して下さい。」
と、どうせ最後だからとエラそうに語ってしまいました(笑)。
けれども、それを聞いた暁さんにすかさず「鈴木君もね。」と釘を刺されてしまいました(笑)。
その通りです。中国へ行ってもちゃんとシャンチ―・・・じゃなくて(笑)、チェスに日々精進する所存であります!!

表彰を終え、暁さんの御挨拶、代表鈴木の挨拶を終えた後、カメラマン白井さんにより全員で記念撮影をし、白井プレゼンターによる
抽選をして、めでたく全日程終了となりました。

その7.打ち上げ

最後まで片づけを手伝ってくれた倍井さんも参加したかった様ですが、時間が無かった為先に帰られました。
ということで、4人で居酒屋へ。


打ち上げ時のHCC執行部3名と講師。左手前の人は豊橋から召喚した魔王です(笑)。

いつも3人だけでも話が終わらないのに、さらに暁さんまで加わってしまったのだから大変です。
チェスに関する話で大いに盛り上がりました。秋永さんは別の予定があったのでほどほどで帰られましたが、
一人減っても話は留まるどころかお酒が回って終わる気配は一向にありません。
それにしても、代表鈴木もチェスは好きですが、チェス界に関する知識は初心者レベルであることを
改めて思い知らされました。やぁ本当に、この二人はチェスオタクですよ(笑)。羨ましいです。

また、当然今回の選手権の話にもなりました。
名古屋の常連の方、遠征組の方、HCCのメンバー、本当に最後の最後まで死力を尽くして戦いぬいてくれました。
ほとんど全員の名前がでましたが、一つ一つ書くときりが無いので差し控えたいと思います。

暁さんがしきりに言っていたのは、やはり最後の将照さんとの試合です。
対局が宴たけなわとなったところで、ルークを切って試合を決めにいった暁さん。ところが、そう簡単には詰まず、持ち時間を
大量に消費しただけで失敗に終わりました。ほとんど加算時間だけで戦う暁さんでしたが、逆に野生の本能が目覚めた暁さん。
劣勢になるといつも「こんな奴に負けてたまるか。」(これはみなさんも心当たりがあるのでは?(笑))と奮起するらしいのですが、
その後必死に指した結果、クィーンをわざと捨てる代わりにビショップの効きを生かしてナイトでメイトする手を発見。
結果的には、暁さんのオーラの影響?!でうっかりクィーンを取ってしまった将照さんの負けでしたが、仮に将照さんがクィーンを取らずに
ルークを返していたら、ポーンの数等で若干黒の将照さんの方が有利でしたので、結果は違っていたかもしれません。

まぁでも、表彰式の時に代表鈴木も話しましたが、チェスは結果がすべてです。これは、チェスプレイヤーなら私なんかにイチイチ
言われなくてもみなさん身を持って体験済みでしょう(笑)。

将照さんもこれを励みに一段と精進してもらいたいです。何しろ、もはや日本の鈴木は将照さんだけです。
日本の鈴木は将照さんに任せて、もう一人はシャンチー・・・じゃなくて(笑)、暫く外国で修行します。
まぁいずれにせよ、こちらの鈴木はもう世界にしか興味がないので(笑)、後はよろしく。

また、打ち上げ時に代表鈴木が言ったこととしては、やはり今回負けなしで準優勝した藤澤さんについてです。
最終局のすべての対局が終わった後、藤澤さんから
「最後に鈴木君に花向けできたかな。」
とシンプルですが何とも言えない熱いお言葉を頂き感動しました。
「最後に強い藤澤さんを(再び)見れてよかったです。」
と、返す代表鈴木。今回の一大名場面です。(多分・・・いや、きっとそうだ(笑)。)

思えば藤澤さんと仲良くなったのは一昨年の名古屋オープン以降です。それまでは顔見知りに毛が生えた程度でしたが、この時、
「藤澤さんに後押しされて浜松にチェスクラブをつくりました。」みたいなことを代表鈴木が言い、藤澤さんも、
「そこまで言ってくれるなら浜松へもぜひ行きたい。」みたいなことをおっしゃってから親交が深まりました。
何しろ、名古屋例会で藤澤さんと会う度に、
「浜松ってあんなに大きな街なのに何でチェスクラブが無いんだろうね?」
って、しきりに言うんですよ。これは、暗に作れってこと催促しているとしか思えませんよね(笑)?

いずれにしても、その年の愛知県選手権で全勝優勝した藤澤さんは、その前後は例会も含めて、
「いつ私を負かしてくれるんだろう。」と、本人が思っていた程絶好調でしたが、この名古屋オープンは一転して不調に終わりました。
そして、弟子の高田君との毎週水曜日に岐阜駅で対局することになったのは、その直後からです。
この打ち上げ時に初めて知りましたが、なんでもこの名古屋オープンが終わった時に暁さんが、
「藤澤さん、こんな藤澤さんはダメです。藤澤さんならもっとできるはずです。」みたいなことを言い、それに対して藤澤さんが、
「うん、暁君の言う通りだね。」と、見事にそそのかされた(笑)のがキッカケだとか。

その甲斐もあってか、7月末の浜松チェス祭り2009では再び全勝優勝されましたが、その後は暫く不調に陥り、一時は御自身が代表
を務めるGCF例会の参加条件である、「レーティング1700以上」という条件を満たせなくなる危機にまで落ち込みました。
現在は、「最近は毎日勉強している。」とのこともあって、今年から見事に復活されました。

最後の対局も、勝てば文句なしで全国へ行ける弟子を容赦なく叩き潰すあたりは、以前の恐ろしさを取り戻したことを証明しています。
代表鈴木も、その昔(といってもそんなに昔ではありませんが)欧州の大会に参加する際に、せっかくだから少し旅行してから参加しよう
と思い、それまで行ったことがないイタリアへ寄ろうと思いました。そのことを藤澤さんに打ち明けると、
「それならぜひトリエステに行ってもらいたい。」と言い、トリエステに関する様々な情報を教えてくれました。

けれども、イタリアに行ってからも(自分の中では)そんな無名なところへ行ってもしょうがないなと思ってましたが、
やはり行ったことがある人があんなに薦めるんだから行ってみようと思って実際に行き、その日が前日の大雨から一転して快晴だった
こともあり、素晴らしい一日を送ることができました。感謝の気持ちでいっぱいの代表鈴木は、藤澤さんへのメールに写真を添付して
送ります。藤澤さんからの返信メールにも、
「よくぞおいでいただきました、トリエステ!さすがは我が1番弟子! 行くと決めたら必ず果たす方ですね?」
から始まり、トリエステに関していろいろと教えてくれます。ちなみに、いつの間にか弟子になってしまったのは御愛嬌(笑)。

帰国後、いの一番に師匠に報告する一番弟子に開口一番、
「実はトリエステには一度も行ったことないんだよね。(藤澤さん談)」
「ええーっ!!・・・けど、あれだけ細かく説明していくれたじゃないですか。(代表鈴木談)」
何でも、ガイドブック等により頭の中で完全に地図ができあがっているとのこと。
・・・この人、間違いなくプロです(笑)。それぞれ違った意味で、師匠の恐ろしさを味わった兄弟弟子でした。

とにかく、「藤澤さんとブリッツしているのが一番楽しい(白井さん談)。」と言われるような、楽しい方です。
ちょっと藤澤さんのことばかり書き過ぎなのでいい加減終わりにしますが(笑)、何にせよ、藤澤さんの天敵のうち一人は既に
海外へ行っており、もう一人も今度海外へ行ってしまいます。
高田さんのブログに「東海地方の和製コルチノイ」とあるように、この春以降は東海の王者として、容赦なく他のプレイヤーに
人生の厳しさを教えてくれることは間違いないでしょう。

白井さんの終電に合わせて夜23時頃に打ち上げを終了。(ちなみに暁さんは泊り)
改札の前でも3人でさらに30分近く話し込んでしまいましたが(笑)、ようやく長くて楽しい一日を終えました。


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