第10回全日本チーム選手権参戦リポート



大会名称:第10回全日本チーム選手権
開催日:2010年9月19日(日)・20日(祝)
開催場所:東京都大田区池上会館

参加メンバー:鈴木陽介、倍井隆行、久保寺孝夫、高安信行、白井健太郎、秋永利明
(参加時のJCAレート順敬称略)


まえがき

第一部:序章 チーム発足
第二部:前編 直前合宿
第三部:中編 大会初日
第四部:後編 大会最終日

あとがき

フォトギャラリー


編集長:鈴木陽介
アシスタント:白井健太郎
起草場所:帰りの「ぷらっとこだま」車中にて

完成日:2010年9月26日
発行:浜松チェスサークル

追加:2011年9月20日(火)


 まえがき

さて、皆さんお待ちかねのチーム選手権参戦リポートですが、結論から言いますと、6試合中3勝2敗1分けの3.5ptで大会を終え、
目標の勝ち越しを見事達成することができました。ご声援ありがとうございました。

そして、今大会における浜松チームのメンバー構成は、以下の通りです。※レートはチーム選手権参加時のJCAレート

◎浜松チェスサークル基本メンバー
・鈴木 陽介 1764
・久保寺 孝夫 1706
・白井 健太郎 1652(11)
・秋永 利明 1162

◎補欠(助っ人兼相談役)
・倍井 隆行 1761
・高安 信行 1692

以上計6名にて参加しました。それぞれの出身地を西から並べると、奈良、桑名、豊橋、浜松、小田原、横浜となり、
さながらチーム東海道といったメンバー構成となっております。

なお、助っ人のお2人については、大会要綱の参加資格が「1チーム4名+補欠2名」となっている関係上、登録は補欠扱いとしました。
しかし、本リポートを読み進めて頂ければわかると思いますが、実際はチームの主力として大活躍されました。つまり、今回の勝ち越し
劇は、彼ら2人の助っ人のお力添えのお陰と言っても過言ではありません。

地方から、しかもこれだけ広範囲からメンバーが集うのは、このチーム選手権始まって以来の快挙だと思いますので、何とか結果も出す
ことができ、この快挙に花を添えることができたと考えています。

なお、本リポートは、共に最終局で激闘を繰り広げた代表鈴木と白井さんが、そのままのテンションで(決して飲酒はしてません)
今大会を振り返ったためか、かなり砕けた表現となっていますが(笑)、あえてそのまま発表します。

理由は、出る以上はもちろん優勝という大目標を目指しますが、今回の一番の目的は交流であり(白井さん談)、かといって結果が
あまりにも悪いと楽しさが半減する(代表鈴木談)ので、当たり前ですが皆真剣に対局しました。そして、それを達成した以上、多少面白
おかしく報告した方が僕達らしいし、むしろそれが使命だと(白井さん談)いうことになり、変にかしこまらずに、ここにリポートを発表します。

注:かなり長いのでボチボチ読んで下さい。


 第一部:序章 チーム発足

その1.相談役からのオファー

去る2010年5月11日、全国大会やゴールデンオープンの熱戦が冷めるのも束の間のこの時期、浜松チェスサークル相談役の
高安さんより、同代表の鈴木に1通のメールが届きました。(以下全文)

 「今日、札幌のホテルを予約した。夏はいつものように札幌サマーだけど、
 10月のジャパンオープンの前に、9月のチーム選手権にも一度出てみたいよね。
 あれは4名で1チームだから、僕と鈴木君のほか、秋永さんと白井さんの4名で
 出られるように、一度彼らを誘ってみてよ。」

実は、浜松チェスサークルの代表鈴木は、JCA公認のクラブとなった去年もチーム選手権に出たいなと思っていました。
しかし、基本的に代表鈴木以外の基本メンバーは遠征に乗り気ではないし、公式戦もようやくやり出したという段階でしたので、
流石に時期尚早と判断して見送ったという経緯がありました。

そういう意味では1年前と状況は余り変わっておらず、しかも祝日が確実に休みの高安さんや秋永さんと違い、
土日は基本的に休みであるが祝日は全く関係ない白井さんと代表鈴木は、この時点では本当に休めるかどうか不透明であり、
そうなると、仮に4名でエントリーした場合、直前になって出場できないという可能性が十分にありました。
ということで、個人的には物凄く出たいものの一旦は保留。

そんな中、5月30日の例会で久保寺さんが約1年ぶりに電撃復帰。ここ1年はいろいろあってチェスができなかったらしいの
ですが、今後は大丈夫だということで、チーム選手権に向けて少し光明が見え始めました。
それでもまだまだ先の話だということで、浜松の基本メンバーにはそれとなく匂わしておくというレベルに留めておきました。

その2.6人目のメンバー

時は移って2010年8月1日、前週の7月25日に開催された「第2回浜松チェストーナメント初日」を無事終えた代表鈴木、
秋永さん、久保寺さんの3人に、白井さんを加えた4名は、浜松大学の秋永さんの部屋で極秘の1日合宿を開催しました。
目的は単純にチェスの勉強ですが、代表鈴木には一つの企みがありました。
例の祝日休みの件はともかく、そろそろチーム選手権に出るか否かの決断をしなければいけません。
それについて正式に他の基本メンバー3名に提案すると共に、万が一2人が出れない場合を想定して、念の為にもう一人
メンバーを追加した方が良いと思い、その6人目のメンバーを誰にするかという相談をするのが本当の目的でした。

これについてはいろいろと思案しましたが、直感では倍井さんが良いのではと考えていました。
ただ、みんながこのことについてどう思っているかを探るため、6人目追加の提案だけし、あえて特定の人名を出さなかった
ところ、間髪を容れずに「倍井さんでいいんじゃない(白井さん談)。」との提案があり、他の名前も出ましたが、最終的には
第一候補は倍井さんということで意見が一致しました。その場に居なかった高安さんにもメールで確認したところ、
「倍井さんを誘うの大賛成です。(引用)」との返事あり。
ということで、倍井さんに確認する前に勝手にメンバーに加えてしましました(笑)。

倍井さんからのメールにも「渡りに船(の申し出)。(引用)」との記載があり、ここに6人編成の浜松チームが発足しました。

その3.スズキトラベルエージェンシへの見積依頼
※白井さんが冗談で「スズキトラベル」と連発していたため

浜松チームは6人編成で発足したものの、この時点ではまだ全員の出場が確定していません。
その中でも特に白井さんの出場が一番懸念されるところでしたが、8月末に一本の電話があり、職場の上司にお願いして
なんとか出場できることになったとの吉報を頂きました。

ところがほとんど遠征をしたことが無い白井さんは会場まで辿り着けないどころか、高速バスや宿の予約もわからないとのこと。
そこで、代表鈴木に一切の手続きをお願いしたいという引合いを頂き、さらに大体いくらぐらい必要か知りたいということもあって、
その見積依頼も受けました
これを聞いた代表鈴木は、この見積如何で白井さんの参加・不参加が決定すると真摯に受けとめ、「にわかに旅行代理店に変身し」、
早速作業に取り掛かりました。内容は、行きの高速バス代、帰りの新幹線代、2泊分の宿代(朝食込)はもちろん、細かな電車賃や
さらには昼食代や夕食代まで含めて白井家に提出しました。後で聞いた話ですが、「ここまでやってくれると思わなかった。」と、
奥さんがおっしゃっていたらしく(白井さん談)、従って難なく受注し、当初は全員出れるか不透明でしたが、晴れて全員の参加が
確実な情勢となりました。

追記:この項を発表した翌日、みとじんさん(神田大吾さん)より一通のメールが届きました。(以下一部引用)

 「スズキトラベルエージェンシー」は、比喩ですか?
 初めは、鈴木さんの本職が旅行代理店の社長さんかと思いました。
 そうではなくて比喩ならば、例えば「にわかに旅行代理店に変身し」等、
 文を多少、補われた方が分かりやすいかと思います。

確かに上記文章を素直に読むと、浜松チェスサークルの代表鈴木が、旅行代理店に勤めていると勘違いされる様な内容になって
います。従いまして、ご指摘の通り訂正致しました。それにしても社長って(笑)・・・、以後このリポートを読む際には、くれぐれも
マジメに読まない様ご注意願います(笑)。

その4.チーム選手権に向けて
 
全員の参加が決定しましたので、後は各自で準備を進めるだけです。

まずは、高安さん。
浜松大学で基本メンバー4人が決起集会を開いた翌週、高安さんは毎年恒例の札幌チェスクラブ主催のサマートーナメントに参加し、
同率ではありましたが見事優勝という幸先の良いスタートを切りました。その後は、チーム選手権当日まで他のメンバーとの交流は
ありませんでしたが、大阪アンパサンチェスクラブにおいて毎週欠かさず対局し、大会本番に備えました。

次に白井さん。
相変わらず多忙で人とチェスをする時間はなかったらしいのですが、仕事の休み時間にもタクティクスの問題集を解く根気(何しろ最初の
1年で2万問解いたらしいです。)に加え、1800〜1900のフリッツともほぼ毎日欠かさず対局しており、本当の意味での実戦不足の
感は否めませんが、日本のチェスプレイヤーの中では有数の勉強家だと思います。きっと本番では良い結果を出してくれるでしょう。

続いて久保寺さんと秋永さん。
お2人とも中々対人チェスをする時間がないようですが、それでも「第2回浜松チェストーナメント」の全6試合に参戦して大会本番に
備えました。特に久保寺さんに至っては、3勝0敗3分けの無敗で堂々の優勝を飾り、チームのエースとして選手権での活躍は間違い
ないと、メンバーに勇気を与える非常に頼もしい存在となっていました。

そして、倍井さん。
浜松初日に参加後にジャパンリーグで大活躍し、その後は、松戸サマー、東海オープン、浜松最終日と毎週大会に参加したにも
関わらず、一つも大きく崩れることなく安定した活躍を見せ、チームの中核として本番でも活躍してくれることは間違いないと、こちらも
メンバーにとって非常に心強い存在となっていました。

最後は代表鈴木。
浜松初日に参加後は、倍井さんに一週間遅れましたが、松戸サマー、東海オープン、浜松最終日に連続参戦しました。
ところが、倍井さんとは打って変って、初っ端の松戸サマーで落ち込む余裕も無い程の惨敗を喫し、さらに東海オープンでも散々痛め
つけられ、今年唯一のチェス月間の前半戦で、早くも瀕死の重症を負ってしまいました。

それでも、チーム選手権ではレート順にボードに座る以上、代表鈴木が一番ボードに座ることは既に確定しているため、泣き言も言って
いられません。そこで、何とか流れを変えようと思い、余っている代休を使って白井さんと勉強しようと思い立ちました。
ところが、相変わらず多忙の白井さんからはやんわりお断りをされ、もはやこれまでと思っていたところである事件が発生しました。

 2010年9月某日、白井さんは近所の神社へお参りにいきました(理由は不明)。
 その境内において犬を連れた知り合いのおじいさんと会い、軽快に挨拶をしてさらに奥へと進んだところで突然、右のお尻に衝撃が
 走りました。「おっ、なんだ?」よく見ると先程の犬が噛み付いているではありませんか!!
 必至に振り解こうとする白井さんでしたが、人間の体のつくり的にどうも力が入らない場所らしく、元空手家の白井さんも流石に
 お手上げ。慌てて駆けつけた先程のおじいさんによってようやく開放されました。
 話し合いの結果、とりあえず服代だけもらうということになりましたが、それも気の毒だということで、その犬が保険に入っている
 ということを幸いに、とりあえず病院へ行くことになりました。

それで、その書類を受け取りに行くためにもう一度病院へ行かねばならず、そうなると半休だと慌しいので一日有給をとることにした。
だから一緒に勉強しようとの連絡を受けました。

電話越しにその話を聞いた代表鈴木は、必至に笑いを堪えつつも即快諾。
そして、浜松最終日(9月12日)直前の平日である9日に白井さん宅にお邪魔し、充実した1日を過ごすことができました。
昼食は白井さんと2人で近所のラーメン屋へ行き、夜になって帰ろうとしたところで奥さんから晩飯オファーがあり、こちらも当然アクセプト
しておいしく頂きました。何でもっと早く言わなかったんだという旦那さんからの問いに対しては、何でもこのチェス気狂い2人が大いに
盛り上がっていた為に、ついに声を掛けることができなかったそうです(笑)。

白井家での1日合宿のお陰もあり、数日後の浜松最終日では何とか無敗で乗り切ることが出き、翌週のチーム選手権に向けて
ようやく復調の兆しが見え始めました。

前編(直前合宿)へ続く


 第二部:前編 直前合宿

その1.いざ吉祥寺へ

2010年9月18日のツアー初日。目的地は吉祥寺チェスサークル。集合時間は16:00。
奥さんに浜松駅まで車で送ってもらった白井さんは、浜松駅で鈴木添乗員と合流。そして、難なく浜松駅バスターミナルの高速バス
停車場から予約済みの高速バスに乗り込みましたが、お客の数がすごい。

実は白井さん、行きの高速バス車内で熟睡するために、前の日は僅か2時間睡眠で夜勤をし、この日の夜勤明けからそのまま
寝ずに浜松駅まで来ていました。ところが、お客の数が多い上に、彼の座席は通路側・・・熟睡はちょっと難しいですね。
(ちなみに鈴木添乗員は窓側(笑))

それはともかく、予定の8:30から少し遅れながらも浜松駅バスターミナルを無事出発。
鈴木添乗員の経験上、大体いつも時間より早めに着くので、結局は予定通り13:00には東京駅に着くだろうと油断していたら、
なんと浜松ICの合流点付近から既に大渋滞。唖然とする2人。そういえばこの日は3連休の初日でした!!

その後もいくつかの渋滞を抜けてようやく足柄SAに着いたのが12:30。(この時点で、既に時間通りに到着しないことは明白。)

これだけ時間があると、もう覚悟を決めて寝るか本を読むかしかありません。
鈴木添乗員は、みとじんさん(神田さん)対策にブダベストギャンビット等の定跡書を読んだり、隣席の年配の女性と談笑したり、
あるいは時々寝たりして時間を潰しました。
一方白井さんは、相変わらず問題集を解いたり、時たまうとうとしたりしていましたが、そこは、マダムキラーの白井さん、鈴木添乗員の
隣に座っていた年配の女性(確かシチリアの観光本?!を持っていた)と、通路越しにイタリアの話等で盛り上がり、予期せぬ盤外での
シシリアンの一局に、さらに睡眠時間を奪われました(笑)。

足柄SAで置き去りにされかけ、渋滞により2時間半遅れながらも何とか東京駅日本橋口に到着。
中央線へ乗り換えていざ吉祥寺へ。

午後4時少し前、無事吉祥寺駅到着。吉祥寺CCも難なく発見。


吉祥寺チェスサークルの看板

予定よりかなり遅れましたが、なんとか約束の時間までに到着することができました。

その2.6本の扇子

それでは、ここで少し時をさかのぼりたいと思います。

大会が終わったので正直に明かしますが(ほとんどバレていると思いますけど)、今回浜松チーム6名は、全員無地の扇子を
持っていました。理由は、自分の結果を他のメンバーに伝えるためです。

勝ち・・・扇子を少し開いて置き去る。
ドロー・・・扇子を閉じて置き去る。
負け・・・扇子を持ち去る。

ここの部分は、今後読み進めるために非常に重要ですので、しっかりおさえておいてください(笑)。

実は、代表鈴木はチーム選手権への「出場」と「ある程度の結果」に関してはこだわっていたものの、特にチームとして何かをする
という点に関してはまったく無防備でした。というのも、移動手段や宿泊地がてんでんばらばらですので、前日に高安さんと何処かで
少し指してウォーミングアップするくらいしか考えていませんでした。

場所については、高安さんから「吉祥寺チェスサークル」の名前が挙がり、他のメンバーにも打診して最終的に全員吉祥寺CCに集合
ということにはなったものの、それでも軽めの持ち時間で数局指すというプラン以外は、特に何も考えていませんでした。

ところが、松戸サマーの初日に倍井さんと晩飯を共にした際に、「せっかくチームで出るんだから、チームとして何か工夫した方が
いいんじゃないか(倍井さん談)。」という提案がありました。ということで、具体的に以下の様な案を既に用意してくれておりました。

1.自分の結果を他のメンバーにもわかるようにする。
2.劣勢時にどこまで粘るかチームとして決めておく。
3.(前日や初日の夜に)全員でプレパレーションする。

この中で1番と2番は関連しています。つまり、仲間の結果次第でどこまで粘るか変わってくる可能性があるからです。

特に1番は重要で、これは、実戦経験が少ない方には多少わかりにくいかもしれませんが、自分の対局に集中するあまり、いつの間
にか隣の試合が終わっていて結果がわからないということが多々あります。これは人にもよりますが、他人の試合が気になっている
ようでは、意図的にリラックスしている場合は別として、余裕があるというよりは、むしろ集中していないという場合が多いです。

では、具体的にどうするかという点では、まずジェスチャーで伝えるという案が出ましたが、これはマナー上問題がありそうですし、
そもそも気づかない可能性があるのでボツ。次に口頭にて、負けたら「負けました。」、引き分けなら「ドローですね。」と声に出して伝える
という案がでましたが、これも気づかない可能性があるのでボツ。最後に小物を置くという案が出て、基本的にその線でいこうということ
になりましたが、具体的な小物に関しては、他の2番や3番と併せて前日にメンバー全員が揃ったときに決めればよいということで、
その場は終了しました。

その3.合宿開始

時は戻って、とあるビル3Fの吉祥寺チェスサークル。
久保寺さんは、スタッフ講師の上原さんを始めとする吉祥寺のメンバーと談笑しており、倍井さんと秋永さんは既にプレパレーションを
していました。そこで驚いたことは、倍井さんは例の小物として無地の扇子を人数分用意してれており、さらに各自のオープニング
別にA3の冊子まで作って持ってきてくれていました。
今だから正直に言いますが、倍井さんがメンバーに加わるのは大賛成としても、実は6人は少し多かったかな、どうかなと思っていました。
まさにこの時、第6人目のメンバーを倍井さんにして良かったと改めて思いましたし、他のメンバーも同じ気持ちだったと思います。。

予定の午後4時までには高安さんも到着し、6人全員で15分+1手15秒加算で軽く3局指しました。ちょうど1局目を指している頃に、
オーナーの浜根さんが来られましたので、皆で挨拶。最後は、翌日に向けて全員で諸事確認し、この直前合宿は終了しました。
ちなみに、ここで決めたことは、扇子で結果をわかるようにするというただ一点だけです。
チームとして劣勢時にどこまで粘るという強要はせず、他の結果や局面を考慮した上で、後は各自で判断することにしました。
まぁそれが一番自然かなと思います。


吉祥寺チェスサークルにおける合宿風景

3局全勝したのは、久保寺さんと代表鈴木の2人で、久保寺さんに至っては、チーム選手権と同じ持ち時間の浜松の大会でも
トップ優勝しましたし、これはもう、チームの大エースとして個人入賞する程の活躍を見せることは間違いないでしょう。
代表鈴木にしても、チェス月間前半戦で瀕死の重傷を負いながらも「本番はチーム選手権だから」と、何とか自分に言い聞かせて
ようやく復調の兆しが見え始めてきました。1番ボードなので依然として厳しい戦いが予想されますが、今回の結果により、
少なくとも他のメンバーに対して多少の安心感を与えられたんじゃないかと勝手に思っています。

この対局に関しては、実は前週の浜松最終日の打ち上げで、代表鈴木、秋永さん、久保寺さんの3名で打ち上げを行った際に、
「大会本番と同じ持ち時間でやった方がいいんじゃない(秋永さん談)。」という提案があり、なるほどと思った代表鈴木は、
吉祥寺チェスサークル側にもメールにて「16:00から公式戦を1局」と伝えていました。ところが、夜勤明けや風邪をひいたメンバーも
おり、全員で話し合った結果、快速チェスを軽く3局指して終わりました。
大会終了後、帰りの新幹線にて、「前の日にちゃんとした持ち時間で指しておけば良かった(白井さん談)。」という反省がありましたが、
その話はまた後ほど。

その4.焼肉屋で翌日へ備える

合宿終了後は、吉祥寺界隈の焼肉屋へ行き、チームのさらなる結束力の向上を図りました。
ただ、場所は地下でしかも狭く、「ここで火事が起きたらチェックメイトだね(秋永さん談)。」という様な窮屈なところでしたが、
味・量・価格すべてが満足でき、翌日から始まる激戦へ向けて英気を養うことができました。

「大会の前の日に調子が良いと本番の結果が良くないんだよね。」と言いながら他のメンバーを一蹴した久保寺さん。
「チェスの対局がある前の日にお酒を飲むと本番で調子が良くないんだよね。」と言いながらグビグビ飲んでいた久保寺さん。
「明日もちゃんと遅刻してきて下さいよ。」と白井さんと代表鈴木にイジられる久保寺さん。
(浜松の大会は2日共遅刻しながらのトップ優勝だったため)
けれども最近の調子を考えると、そんな迷信じみた話はまったく関係ないだろうと、久保寺さんの活躍を疑うメンバーは一人もおらず、
誰一人として彼の飲酒を止めることはできませんでした(笑)。まぁ必ずやってくれますよ。

そして、大会直前になって犬にお尻を噛まれて病院送りにされながら、奇跡の復活を遂げた白井さん。
1800〜1900のフリッツや、名古屋四天王とも互角に渡り合う実力を持っている白井さん。
しかし、現在のレートでは仕方なく4番ボードに座らざるを得ない白井さんの相手になるプレイヤーは、
恐らく他のチームにはいないでしょう。彼もきっとやってくれますよ。

いずれにしても、完全にアンダーレートな久保寺さんと白井さんの2人は、このチーム選手権において、
他のチームにとって脅威となることは間違いないでしょう。

最後に、チーム選手権というゴールに向かって走り出した矢先に松戸で大ゴケした代表鈴木。
さらに名古屋でハネられて心の中は既に松葉杖状態の代表鈴木。
これまで数々の引退危機を乗り越えてきたものの、チーム選手権の1番ボードという修羅場で、遂にチェス人生にピリオドを
打たれること必至の体表鈴木は、果たしてチームに貢献することができるのでしょうか?

・小田原の武蔵(久保寺さん)。
・生粋の三河武士(白井さん)。
・瀕死の落ち武者(代表鈴木)。

今回のドラマは、恐らくこのハプニングアラサー(男ですが)3人衆を主軸に展開されるでしょう。

中編(大会初日)へ続く


 第三部:中編 大会初日

その1.幸先の悪いスタート

鈴木添乗員と同じく蒲田駅西口の「スーパーホテル東京・JR蒲田西口」に泊った白井さん(当然シングル)。
この日も鈴木添乗員の案内の下、会場である池上会館へ向けて出発し、蒲田駅の改札を通り抜けたところで絶叫する白井さん。
「しまった。扇子を忘れた!!」、同じく「あぁっ!!」と、絶叫しながら振り返る鈴木添乗員。なんと、前日に倍井さんから受け取った扇子を、
2人ともホテルに置き忘れてきてしまいました。

(これはマズイ、このままでは会場の入り口で正座させられる。)と焦った2人は、すぐさま取りに帰ろうとするものの、既に改札を抜けて
しまっているため、とりあえず会場に着くまでのコンビニかどこかで買ってなんとか誤魔化すことに決定し、そのまま車中へ。

偶然居合わせた松戸チェスクラブ代表の田畑さんと佐々木さんには平然と挨拶を済ませ、駅に着くとすかさず駅前のコンビニヘ直行。
しかし、扇子は当然売っておらず、さらに進んでそれっぽい店にも入りましたが、結局手に入れられず。

「よし、ここはオレが男の土下座を見せる。」と言う白井さん。(また大げさな)と思いつつも「オレはこういうキャラだから(白井さん談)。」
と、すべて自分の責任にしようとする白井さん。(まさか本当にやらないだろう)と思いながら「お願いします。」と言う鈴木添乗員。

時は少し進んで会場に到着した2人は、一通り挨拶を済ませた後、会場の検討室へ。
そこで倍井さんを発見した白井さんは、すかさず滑り込んで男の土下座を見せる・・・予定でしたが、イスが邪魔だったので(笑)、
冷静にイスを避けてから土下座して詫びを入れた白井さん。微笑みながら許す倍井さん。
いずれにしても、対局するのは4人だけですので、扇子はとりあえず4本あれば事足ります。平均年齢ギリギリ20代のこのだらしない
2人組と違い、ちゃんと忘れずに扇子を持ってきたオトナの他のメンバーのお陰で、とりあえず事なきを得ました。

その2.冗談が現実に

いよいよ第10回全日本チーム選手権開幕です。
「10回目じゃなくて初回かと思った(その日の打ち上げにて、久保寺さん談)。」と全参加者が思う程、最初はゴタゴタしましたが、
とにかく対戦相手が決まりました。


第10回全日本チーム選手権・1R対局風景

相手は麻布学園Bで、平均レートは1124。チームボードは7番ボード。※平均レートはチームの上位4名にて算出した模様
伸び盛りの少年は油断ならないとは思いつつも、まぁ流石に4タテだろうと、その辺りの気持ちの余裕もあり、初戦ということもあって
会場全体をぶらぶらしていました。ところが戻ってくると、なんと、全員互角に渡り合っているではありませんか?!

しかしここはチーム戦。抜け番の代表鈴木と白井さんにできることは、仲間を信じることと、さっさと昼飯を済ませることだけです(笑)。
ということで、池上駅界隈のそば屋で昼食を済ませ、プロの営業スマイルを見せる店長が印象的なコンビニに立ち寄ってから会場へ。

ところが、依然苦戦中のメンバー4人。あれっ?と固まる抜け番の2人。
それでも高安さんがまず勝って、チーム初ポイントをゲット。
倍井さんもイーブンの局面から安定したチェスを見せ、しっかり勝利。
そして秋永さんは、終始優勢ながら最後は無理せずドロー。

この時点で、初戦にて早くもチーム選手権初勝利確定です。

残るは、浜松チームの大エース久保寺さん。
前日の打ち上げ時にあれ程「明日は遅刻してきて下さいよ。」と、白井さんと代表鈴木にお願いされたにも関わらず、この日はなぜか
早刻(代表鈴木命名)してきた久保寺さん。普通の人なら早めに来ても全く問題ないが、「この人に至っては重罪(白井さん談)。」

まぁでも、浜松の大会に2日共遅刻してしまったのは、小田原からバイクで来たから(代表鈴木談)だと思いますし、とにかく、今の
イケイケの久保寺さんな全然相手にならないだろうということで、余り少年をイジメちゃだめだぞと思っていたら、まさかの敗戦。

なんと、前日の当たって欲しくない予想が当たってしまい、冗談が現実になってしまいました。
まぁそれでもアラフォー(男ですが)三人衆の大人勝ちのお陰でチームは勝利しましたし、数日前に風邪をひいて
(山は越えた(前日久保寺さん談)らしいのですが)まだ本調子じゃないでしょうから、次はしっかり結果を出してくれるでしょう。

No.7
浜松チェスサークル
VS
麻布学園B
Bord
Name/Rtg.Avg
1731
2.5pt
1 - 0
1.5pt
1124
Rtg.Avg/Name
No.1
倍井 隆行
1761
W
1 - 0
B
1338(14)
松永 健
No.2
久保寺 孝夫
1706
B
0 - 1
W
1193
横山 雄一
No.3
高安 信行
1692
W
1 - 0
B
988(4)
兵藤 壮亮
No.4
秋永 利明
1162
B
1/2-1/2
W
978(19)
八木 拓光


第10回全日本チーム選手権・初日の検討室にて。代表鈴木(上)、久保寺さん(右)、白井さん(中央)、内田さん(左)

その3.いきなりトップボード

2R目からようやく代表鈴木と白井さんも参戦です。
初戦は勝ったため、スイス式によって次はレベルの高い相手と当たる事は確実です。
ペアリングを確認したところ、対戦相手は東京大学Aで、平均レートは2012。チームボードは1番ボード。
「ほぉ、一気に上がったな・・・って、いきなり初戦でトップボードじゃないか!!」唖然とする代表鈴木と白井さん。
しかも、代表鈴木は常に一番ボードなので、これぞまさしく「トップボードのトップボード」、何てことだ。
最初は少し下のボードでリハビリしてから・・・と勝手読みしていたプランは台無しに。
もはや、チームでがんばろう等と社交辞令を言っている余裕は全く無く、とにかく頭を抱えて盤面だけ凝視し、
自分のチェスだけに集中することにした代表鈴木でした。


第10回全日本チーム選手権・2R対局風景

まずは、4番ボードの白井さん。
「自分のプラン通りに進んだ(白井さん談)。」らしいのですが、内田嬢の魅力にやられて?!大事なところで手順を間違えてしまい、
あっさりピースダウン。果たして眠れる獅子は眠ったままで終わってしまうのか。最終日の活躍に期待しましょう。

続いて、3番ボードの久保寺さん。
「対局中は2人共はぁはぁ言っていた(久保寺さん談)。」とのことで、一体何の話だ?と思いましたが、
要はドロー臭い局面に相手は不満で溜息をつき、風邪をひいて鼻が詰まっている久保寺さんは、口だけで呼吸していたから
というのが原因らしいです。対局が終わって落胆する久保寺さん。扇子を置いたまま立ち去ろうとする彼に、冷静に扇子を渡す倍井さん。
「あの時、もの凄く責められているように感じた(笑)(久保寺さん談)。」という一幕がありつつも、対局終了後は直ぐに知人の結婚式へ。
風邪をひいて冷え切ったエンジンが中々温まらない久保寺さんは、リフレッシュして見事に復活することができるのでしょうか。

そして、1番ボードの代表鈴木。
とにかく、集中する為に手で頭を抱えて視界を狭くし、終始盤面だけが見える状態にしました。相手が急所となる手を指した場合や、
自分が急所となる手を指す場合は、自分を落ち着かせるために、一旦席を外してリラックスするなどの工夫をしました。
持ち時間は、60分+1手30秒加算でしたので、こういった工夫ができました。やはり自分は持ち時間が長い方が向いています。

「オープニングを乗り切れたのが良かったんだと思います(代表鈴木談)。」と、局後白井さんに語った通り、結果はドロー。
緊張の序盤、定跡手順的?!に黒が一時的にポーンアップしたものの、キャッスリングを遅らせていた為に、黒がキャッスリングしたところ
で取り返されてマテリアルはイーブンに。ただ取り返された段階で中央に白のポーンが3つ並んでしまい、逆に劣勢になってしまいました
ので、ポーンをポジショナルサクリファイスして何とかストラクチャーを崩して乱戦へ突入。
そして終盤、「あのエクスチェンジサクリファイスはやり過ぎだった(本人談)。」という白の踏み込みに対し、取ると白にコネクテット
パスポーンを作られるも、いざとなったらこちらもピースを返せば良いと腹をくくってエクスチェンジサクリファイスを受け入れて、さらに
アンンクリアーな局面へ突入。黒が予定通りエクスチェンジを返し、見返りに相手のピースをゲットし、さらに最後は白がパスポーンを
7段目に進めた直後に白からドローオファー。

残り時間白1分、黒5分。直ぐにはプロモーションされないものの、白のパスポーンは依然として危険です。けれども、マテリアル的には
エクスチェンジアップしてるし、だけど黒の方が間違えやすそうな局面だし、などいろいろ考えましたが、チーム戦ということもあって快諾。

翌朝の倍井さんと白井さんを交えた検討でもかなりきわどいという評価でしたので、ドローで正解だったみたいです。
結局チームの勝利には貢献できませんでしたが、「4タテだと流石にチームの雰囲気が暗くなるからドローで正解やで(高安さん談)。」
と言ってくれたこともあり、納得のドロー。いずれにしても、次が大一番となるでしょう。

No.1
浜松チェスサークル
VS
東京大学A
Bord
Name/Rtg.Avg
1731
0.5pt
0 - 1
3.5pt
2012
Rtg.Avg/Name
No.1
鈴木 陽介
1764
B
1/2-1/2
W
2063
三坂 晋
No.2
倍井 隆行
1761
W
0 - 1
B
1996
栗原 大地
No.3
久保寺 孝夫
1706
B
0 - 1
W
1829
大沢 哲也
No.4
白井 健太郎
1652(11)
W
0 - 1
B
1778
内田 成美

その4.大一番のサプライズ

3R開始前、みとじんさんから突然分厚い書類を渡されました。
中を見ると、どこのチームの誰それが、何のオープニングを使っているかというのが丸わかりではありませんか!!
(そういえば、さっき隣に来て何か書いていたな)と思いましたが、ここまでの意気込みには流石に脱帽です。
「(浜松のHPや掲示板等で)浜松のメンバーを事前に教えてくれたお礼に(みとじんさん談)。」ということでしたが、
松戸A・B両チームと浜松チームの情報はしっかり抜けていました。中々抜け目の無いみとじんさん。

そして、大一番の3R目。チームボードは4番ボードとまずまずの位置ですが、相手はなんと、みとじんさん率いる松戸Bチーム。
平均レートは1723。「さっきの資料ぜんぜん意味無いじゃん(代表鈴木談)。」まったく、スイス式の神様も中々かやってくれますね(笑)。
チーム選手権前に浜松の掲示板で、いろいろと駆け引きをしたみとじんさんと代表鈴木でしたが、最後は、チーム選手権で偶然にも
当たった場合はお手柔らかにということで決着していました。

それがまさか本番で、しかもこの大一番であたることになるとは・・・しかし、みとじんさん。あなたの情報は既に割れています。

話は例の白井家合宿まで戻りますが、代表鈴木が持っているa6 Slavの本(新品同然)と、白井さんの本とを交換するという話になり、
白井さんの本棚を物色していたところ、ブダベストギャンビットの定跡書を発見。(こんなのあるのか)と、手に取る代表鈴木。
「そういえばみとじんさんがその本についてアマゾンのレビューに投稿していたよ。」と、リークする白井さん。エクスチェンジ成立!!

しかし、大会の10日前に手に入れたにも関わらず、全然読むことができず。
それでも行きの高速バス車内で携帯式マグネットチェスセットを使って少し並べることができたので、心の準備だけは万全。


第10回全日本チーム選手権・3R対局風景

いざ開戦。初手d4。
おやっ?という表情のみとじんさん。松戸サマーでもd4を使っていたし、何のことだかわからない代表鈴木。
(んっ、もしかして、去年の松戸スプリングで対局した際に、初手e4からフレンチディフェンスになったので、オレのことを生粋の
e4プレイヤーだと思っていたのかな?みとじんさん、それは情報が古すぎますよ。)これはまったくの図星で、
翌日、「そういえば川中さんのHPに、松戸サマーでd4を指している鈴木さんの写真が載ってました(みとじんさん談)。」
・・・みとじんさん、それは思い込んでいた貴方が悪いです(笑)。

早くも有利な立場になった代表鈴木、「よし、ブダギャンよ、来るなら来い!!」と、鯉を網で生け捕りにするかの如く、悠然と構えて
いた代表鈴木の思惑をよそに、fファイルに飛んできたのは、ナイトではなくポーン・・・、1.d4 f5って、ダッチディフェンスじゃないか!!
※ブダベストギャンビット1.d4 Nf6 2.c4 e5 から始まるオープニング

初手でいきなりお互いのプレパレーションが台無しになるという波乱の展開。
代表鈴木が知っていることは、好みではないがとりあえずキングサイドフィアンケットしておけば良いというくらい。あとは全然わからない。
(これはマズイ。ここは何とかエンドゲームまで粘り倒さないと勝負にならない。)と覚悟を決め、2R目と同じく頭を抱えて集中することに。
2人共トップボードということでかなり慎重に指しましたが、最後は白のワンポーンアップのルークエンドゲームに突入し、白優勢となるも、
結果はドロー。白はポーンアップといってもそのパスポーンは黒のキングに止められていましたので、よっぽどうまく指さない限り、
勝ち切るきることは難しいでしょう。

No.4
浜松チェスサークル
VS
松戸B
Bord
Name/Rtg.Avg
1731
0.5pt
0 - 1
3.5pt
1723
Rtg.Avg/Name
No.1
鈴木 陽介
1764
W
1/2-1/2
B
1737
神田 大吾
No.2
倍井 隆行
1761
B
0 - 1
W
1719
浜田 健嗣
No.3
高安 信行
1692
W
0 - 1
B
1715
大竹 栄
No.4
秋永 利明
1162
B
0 - 1
W
1601
川中 陽輔

試合の方は、1番バッターが松井張りのクリーンヒットを放ち、あわやホームランというところで、相手のイチロー張りの柵越えキャッチ&
レーザービームに生還を阻止され、3塁止まりに。残る2番〜4番は、松戸の強豪ピッチャー達に次々と討ち取られてゲームセット。
最終結果は2Rと同じく0.5pt-3.5ptで負け。

その5.居酒屋でリフレッシュ

まぁ落ち込んでいても仕方ありません。とりあえず、前日に引き続き全員で食事へ行くことにしました。
場所は蒲田駅東口界隈の居酒屋です。JCAの大会によく出るプレイヤーにとっては、この辺の地理はお手のもの。
3Rを抜け番にして知人の結婚式へ参加した久保寺さんも誘い、全員揃って一日を振り返りました。


第10回全日本チーム選手権・初日の打ち上げにて

今日の結果といえば、初戦で格下相手に辛勝し、2戦・3戦はせっかく一番打者が必至にファールで粘りながらもようやくバントで出塁
したにも関わらず、2番以降が3者凡退。僅かに4タテを免れるといったさんさんたる結果でした。
そういう意味では代表鈴木は良い仕事をしたらしいのですが、まだチームの勝利には全く貢献できていません。
瀕死の落ち武者から一転、足軽大将ぐらいまでには格上げしてもらったものの、最終日に全敗してしまったら意味がありません。
果たして代表鈴木は、最終日も活躍することができるのでしょうか。

一方、浜松チームの大エースでありながら、まさかの全敗で終わった久保寺さん。
「飲まなきゃやってられねぇ(久保寺さん談)。」と、ヤケ酒を飲みながら笑顔で荒れる久保寺さん。
お酒を飲んだ翌日は調子が悪いという自説が証明された以上、普通なら止めるべきでしょうが、
もはや止める人は誰もいません(笑)。男なら自力で這い上がって来いという暗黙の了解でしょうか。

他にも様々な話題で盛り上がりましたが、例の扇子話になりました。
何でも2局目を終えた久保寺さんは、扇子をそのまま持って知人の結婚式へ行ってしまいました。
ということで、唯一扇子無しで戦った秋永さん。「扇子が無かったから結果が良くなかったんだよ(笑)(秋永さん談)。」
と冗談を言う秋永さん。みんなに責められる久保寺さん。しかし、忘れてはならないことが一つあります。
そもそも扇子を忘れたどこかの2人が一番悪いんです(笑)。

最後は対局の話になりましたが、そこで注目すべきは、3R目4番ボードの川中VS秋永戦です。
一部始終を見ていた白井さんの報告によると、川中さんのオープニングが成功し、勝利の兆しが見え始めたその時、川中さんのお茶が
底をつきました。そこで、すかさず新しいお茶を買いに行って手渡す川中さんの奥さん。勝利のお茶を飲む旦那さん。川中夫妻の愛の力
を目の当たりにした白井さんは、「これじゃぁ秋永さんが負けても仕方ないよ(白井さん談)。」と思ったとのこと。
そして、翌日は川中夫妻に負けない、男の友情を見せると誓う白井さんでした。

後編(大会最終日)へ続く


 第四部:後編 大会最終日

その1.エース復活

翌朝、この日はもうホテルに戻らないので、荷物をすべて持って出発する代表鈴木と白井さん。
とはいっても会場まで持っていくのは流石に面倒臭いので、JR蒲田駅構内のコインロッカーへあらかたの荷物を預けることにしました。

ここで気をつけねばならないのが例の扇子。忘れたら今度こそ会場の入り口で正座させられることは必至なので(笑)、
持ち出し用のカバンに入れたことを入念にチェックし、会場へ。

4R目の相手は、前夜に既に確認済み。暁星学園Aで、平均レートは947。チームボードは8番。
レート的には格下ですが、前日の初戦で痛い目に遭った通り、ジュニアのレートはまったくアテになりません。
皆気を引き締めて対局に臨みました。


第10回全日本チーム選手権・4R対局風景

まずは、倍井さんが相手のブランダーによりあっさり勝ち。
秋永さんも続きたかったものの、残念ながら負け。

この時点でポイントはイーブン。まだまだ予断を許さぬ状況です。
そんな中、逆色ビショップになっていた高安さんが、無理せずドロー。
ということは、チームが勝つためには最後に残った久保寺さんが勝つしかありません!!

何でもドローオファーした際に、隣の久保寺さんが驚いていたらしいのですが、「先に逃げるが勝ちだよ(高安さん談)。」と不敵に
微笑む高安さん。高安さんとしても、ドロー臭い自分が無理して指し続けて万が一負けてもつまらないし、そこは経験豊富な高安さん、
「次に備えた体力温存という意味合いもあった(高安さん談)。」とのこと。いずれにしても、浜松チームのエース久保寺さんがきっと
決めてくれるだろうと、エースに後を託してドローにしたらしいです。

実は、この日も懲りずに早刻してきた久保寺さんですが、もはや、事ここに至ってはそんなことは関係ありません。
浜松チームのエースとして期待されながらも、ここまで勝ち星のない久保寺さんに対し、「男なら自力で這い上がって来い!!」という、
人生の先輩からのエール(暗黙の叱咤激励)であったに違いありません。※注:すべて代表鈴木の憶測
チームが勝利するために正念場を迎えた久保寺さん。ここはチーム一丸となって久保寺さんを応援しようという機運が高まります。
しかし、そこは人間。腹が減っては戦はできぬと、4R抜け番の代表鈴木と白井さんは、既に対局を終えた高安さんと秋永さんを
誘って昼食を取ることにしました。

チームを勝利へ導く為に必死にがんばる久保寺さんを置き去りにし、その見守りを倍井さん一人に押し付けて街へ繰り出した
のんきな4人組は、散々迷った挙句、結局会場から一番近いそば屋(前日とは別)で昼食を取ることにしました。

中へ入ったら、なんと慶應義塾大学OB-αチームのお歴々が居るではありませんか!!
実は、意外にも白井さんと前静岡チェスサークル代表の小笠さんとは初対面だったらしく、早速男の挨拶を済ませ、さらに本を
持っているということで、元全日本チャンピオンの権田さんとも挨拶を済ませてようやく注文に入りました。

共にうどんを注文した白井さんと代表鈴木は、自称江戸っ子の女将さんに食べ方をゴチャゴチャと指摘されつつも何とか無事食事
を終えることができました。特に、マダムキラーの白井さんがここでも本領を発揮し、舌戦一歩手前の非常にアンクリアーな会話を
繰り広げていました。

昼食を終えて会場に戻るのんきな4人組。流石に久保寺さんも対局を終えているだろうと話しながら会場に入ったところ、依然として
激闘を繰り広げている久保寺さん。恐らくこの4人は多少なりとも罪悪感を感じたでしょう(笑)。

局面はさらに進んで、久保寺さんに勝利の兆しが見え始めた頃、お茶を飲もうとペットボトルを口にした久保寺さん。
しかし、中は空っぽ。そこで、ピンときた白井さん。すかさずお茶を買いに走り、空のペットボトルと交換し、前日の川中夫妻の愛の
力に負けない、男の友情を見事に実現させました。してやったりの白井さん。

周りで見ていて必死に笑いを堪える倍井さんと秋永さん。しかし、「あそこで飲んでいたら絶対に噴出していた(久保寺さん談)。」
という久保寺さんに対しては、むしろ逆効果でしたが、最後はしっかり勝ってチームも勝利。残り2試合も話題が尽きなさそうです。

No.8
浜松チェスサークル
VS
暁星学園A
Bord
Name/Rtg.Avg
1731
2.5pt
1 - 0
1.5pt
947
Rtg.Avg/Name
No.1
倍井 隆行
1761
B
1 - 0
W
1003
石川 彩椰人
No.2
久保寺 孝夫
1706
W
1 - 0
B
985
橋本 朔弥
No.3
高安 信行
1692
B
1/2-1/2
W
925
小林 詢
No.4
秋永 利明
1162
W
0 - 1
B
875
木下 知哉

その2.会心のドロー

4R勝ってようやく星をタイに戻した浜松チーム。5Rに勝てばとりあえず半分以上が確定するだけに、ぜひ勝っておきたいラウンドです。
しかし、相手は3Rで強豪吉祥寺チームを倒したダークホース「Awan Cafe Chess Club」。5名中3名がURということで、平均レートは
なぜか1213ですが、いずれにしても油断のならない相手です。チームボードは6番。

いち早く4番ボードに座った白井さん。対局相手である耳にピアスをした個性的な青年と元気に握手する白井さん。
それを1番ボードから遠く眺めていた代表鈴木。こちらに気づく白井さん。なぜか視線をそらす代表鈴木。
とにかく、相手のチームキャプテンは抜け番だったため、1番ボード以外はURという非常に風変わりなチームとの戦いが始まりました。


第10回全日本チーム選手権・5R対局風景

まずは、4番ボードの白井さん。
対局相手の青年は、「ヘビメタが趣味だったらしく、対局中にリズムを取って踊っていた(白井さん談)。」
という中々の強者で、闘志に火がついた白井さんが持ち前の気合いで一刀両断。いち早く勝利。

続いて、2番ボードの倍井さん。
ピースは逆色ビショップだけが残ってしまい、隣で見ていた代表鈴木も一瞬ドローかなと思いました。
この逆色ビショップについては以前、FM渡辺暁さんが講師として来浜した際のリポートにも書きました。(以下全文)

 一般的に終盤で逆色ビショップの場合は、ドローになる確率が高くなります。
 ただ、中盤においては優位な方がよりその優位さが増しますので、主導権を握りたければ
 逆色ビショップにした方が有利な場合もあります。

恐らく、逆色のマスをケアすることができないからでしょう。
倍井さんのこの時の局面は、既に逆色ビショップのエンドゲームと言えますが、ポーンはまだほとんどすべて残っていましたので、
主導権を握ることができれば勝つチャンスは十分あります。倍井さんがキッチリ勝ち、チームは2ptゲットで負けは無い状況となりました。

それでも、目標の勝ち越しを達成するためにはここはぜひ勝っておきたい浜松チーム。
残るは、1番ボードの代表鈴木と3番ボードの高安さん。

1番ボードの代表鈴木は、相変わらずヘタクソなオープニングから終始苦しく、駒割りはイーブンであるものの、勝ちはもちろんドローも
厳しいエンドゲームへ突入。3番ボードの高安さんはさらに悪く、相手よりポーン数がかなり少ないミドルゲームを苦闘中。

そんな中、ブランダーによりエクスチェンジダウンした代表鈴木。高安さんがかなりポーンダウンして劣勢だったため、とりあえず続け
ましたが、流石にポーンがボロボロ落とされる展開になるのは必至だったため潔く投了。
高安さんによると、(最後の方は別として)私の方がまだマシだと思っていたらしいのですが、私としてはピースがほとんど無くなって
いる自分より、ポーンの数は少なくてもピースがまだ数多く残っている高安さんの方がまだドローの可能性が高いと踏んで、高安さんに
後を託しました。

No.6
浜松チェスサークル
VS
Awan Cafe Chess Club
Bord
Name/Rtg.Avg
1731
2.5pt
1 - 0
1.5pt
947
Rtg.Avg/Name
No.1
鈴木 陽介
1764
B
0 - 1
W
1624
大塚 俊一
No.2
倍井 隆行
1761
W
1 - 0
B
UR
小山 信行
No.3
高安 信行
1692
B
1/2-1/2
W
UR
針谷 和音
No.4
白井 健太郎
1652(11)
W
1 - 0
B
UR
早瀬 幹朗

そして、結果は会心のドロー!!
「粘るのは得意なんやって。(高安さん談)」という言葉通りの、チームを勝利へと導く大変大きな引分け劇でした。

その3.運命の最終局

ここまでのチーム成績は3勝2敗と一見すればまずまずですが、内訳を見ると勝ちはすべて2.5ptの辛勝であり、負けは4タテを
ギリギリ免れる0.5ptと、個人成績の合計では負け越しているという、強運にもかなり助けられているといった状況です。

そんなヘナチョコ社会人チームに相対するのは、指し盛りの大学生ばかりの強豪、東北大学Aチーム。
しかも、彼らは3Rで浜松チームが惨敗したみとじんさん率いる松戸Bチームを、4Rで一蹴しています。
相手の平均レートは1644。チームボードは4番ボード。

絶対絶命の浜松チームは、果たして最後に結果を出して有終の美を飾ることができるのか?
運命の最終局、プレーボールです。※注:編集長・アシスタント共に野球は素人


第10回全日本チーム選手権・6R対局風景

まずは、4番ボードの白井さん。
5Rで勝ち、ようやく本気モードに突入した4番ボードの白井さんの相手は、韓国人留学生の朴さん。
JCAでは仮レートですが、USCFのレートはもっと高いとのことで、油断のならない相手です。

ここまで4番ボードで1勝1敗とイマイチ冴えない白井さんですが、名古屋の猛者にも勝つ実力を持ち、オープニングも代表鈴木が
教わる程の知識を持っている白井さん。ここは相手が誰であろうとキッチリドロー以上で終えてくれるだろう信じることができました。
果たして、WBCで韓国人投手から決勝打を放ったイチローの様に、白井さんもヒーローになることができるのか。ここが彼の正念場です。

次は、3番ボードの高安さん。
今大会安定した活躍を見せ、5Rで会心のドローによりチームを救った3番ボードの高安さんの相手は、東北大学ホワイトナイツ
チェスサークル団長の戸川さん。代表鈴木も以前全国大会で対局しましたが、こちらも油断のならない相手です。

続いて、2番ボードの久保寺さん。
4Rの激闘後、5Rは抜け番で十分休息し、最終局はスロットル全開の2番ボードのエース久保寺さんの相手は、なんとここまで
このチーム選手権無敗と波に乗りまくっている、東北大学ホワイトナイツチェスサークルのエース三村さん。彼とも以前JCAの大会で
対局しましたが、非常に伸び盛りの若手です。彼はどんどん強くなっています。

オープン戦(第2回浜松チェストーナメント)無敗により、今シーズンは大活躍を期待されながら、開幕直前に故障(風邪をひく)して
しまい、開幕戦でいきなりKOされた浜松チームのエース久保寺さん。一方、ここまでの5試合で4勝1分けと驚異の防御率を誇る
東北大学のエース三村さん。果たして、絶好調の三村さんが勝って最多勝を獲得するのか、あるいは小田原の武蔵こと浜松チームの
大エース久保寺さんが、「○○(小次郎?!)破れたり!!」と宣言することができるのか。ここの両エース対決は必見です。

そして、1番ボードの代表鈴木。
5Rで一人だけ敗北を喫し、足軽大将から一転して野武士へと格下げとなった1番ボードの代表鈴木の相手は、東北大学ホワイト
ナイツチェスサークルOBで元団長の薄葉さん。彼とは初対局ですが、3Rで代表鈴木と激闘を繰り広げたみとじんさんを、4Rの序盤で
一蹴していたのを目の当たり(一緒に検討に参加)にしていましたので、ここでもこの東北大学の若大将に一刀両断され、遂に一勝も
できずに切腹(引退)せざるを得なくなること必至です。果たして、遠州の野武士は持ち前のハングリー精神で東北の若大将に必死に
食らいつくことができるのか。運命の大将戦です。

対局は進み、全員中盤戦へと突入。

1番ボードの代表鈴木は、白番ということもあってか薄葉さんに対してやや良しの展開。
2番ボードの久保寺さんは、何やらシシリアンドラゴンでドンパチやってましたが、三村さん相手に黒番でまずまず互角の展開。

1番ボードに座っていた代表鈴木は、3番・4番ボードの様子はわかりませんでしたが、彼らならきっとドロー以上で最後を締めくくって
くれるだろうという安心感がありました。こういった仲間を信じるということの大切さを、最終戦になってようやく気づいた代表鈴木ですが、
とにかく勝ち越し以上にもっていく為には、少なくとも自分が勝つしかないという認識に次第になっていきました。
とはいってもここはチーム戦。一番ボードの代表鈴木は、まずは負けないことを優先して取り組みました。

時はさらに進み、それぞれがドラマを抱えながら、対局は運命の終盤戦へと進みました。

延長戦12回裏、1点ビハインドのチーム浜松の攻撃。
1番から始まったこの回は、まずは一番バッターがバントに失敗し、早速1アウト出塁無し。
それでも2番、3番が粘り強く出塁(ドロー)し、この大一番で4番に打順が回ってきました。
イチローや松井と並び称される程の実力を持つ4番のホームランバッター白井さん。ここまで苦しい戦いが続いたが、ようやく見せ場
を作ってやれたと、ここは遂に三河武士としての本領を発揮し、チームを勝利へと導いてくれるだろうと、監督(誰?)を始めとする
メンバー全員が安心しきっていました。

局面も、「終始プラン通りに進み、局後の検討では相手も負けるかと思っていた、と言っていた(白井さん談)。」という状況でしたが、
しかしここはチーム戦、「完全にリップに入っていた(白井さん談)。」ということと、「それでも勝つ為にはこちらもリスクを負う必要が
あった(白井さん談)。」ということで、「こちらからドローオファーした(白井さん談)。」とのこと。ところが、相手はドローオファーを蹴って
試合続行。そこで、なんと白井さんの集中力が切れてしまいました。※リップ=repetition(反復)の略

「相手がドローオファーを蹴ってリップの手順から外れたら悪くなるということは、局後の検討でも本人が負けると思っていたと言って
いた通り、わかりきっており、相手はドローオファーを受けるだろうと思い込んでいた(白井さん談)。」とのこと。
それでも慎重を期して仮に蹴られた場合のことを想定し、「その先の局面を読んでいた(白井さん談)。」とのことで、現実と頭の中の
局面に相違があった為、「思わず(この時点では)関係の無い駒を触ってしまった(白井さん談)。」ということで、一発KO。

なんと、ノーストライク・スリーボールまで相手を追い込んでおきながら、さらには、調子が上がらない4番を我慢して使い続けた
監督(だから誰?)の期待を裏切る、まさかの自打球&アウト(負け)で、この大一番で打順が1番に回ってくる羽目に。

「それは4番の仕事だろ!!(白井さん・代表鈴木共談)」と思っても今更遅く、とにかく残りの3人でがんばるしかない状況に。
そもそも、この相手のレベルを考えた場合、1番から3番までがなんとか粘って出塁(ドロー)し、4番がホームランを放って勝つという
暗黙の了解があったにも関わらず、その4番が真っ先に職場放棄するというまさかの展開になり、打順が巡って、すべての責任がドロー
でも十分許される1番に伸し掛かるという非常事態に発展。トイレからの帰り際に、会場の入口付近でイチローになれなかった無念の
白井さんとすれ違った際に、「ドンマイ!!」と心にも思っていないことを口走りる代表鈴木。いずれにしても、1番バッターとしても、これまで
チームポイントには全く貢献していないので、最後くらいは何とか貢献したいと、とにかく自分の対局に集中することにしました。

そんな中の相手の長考中、2日前に倍井さんからもらって以来、すっかり気に入っていた例の扇子をイジリ倒していたら、「パキッ」
という乾いた音が。(おやっ?)と思って扇子を見ると、扇子の根元部分のプラスチック製のストパーの端が、ポロっとイスの上に落ちて
扇子がバラバラの状態に。なんと、今大会我慢のチェスが続く代表の憂さを一身に受け続けた扇子も、遂に悲鳴を上げてしまいました。
(なんてこった。子供みたいに扇子を壊してしまった。)

よく、「下駄の鼻緒が切れると(滅多に起こることではないから)不吉なことが起きる」といいますが、下駄と扇子が同じく伝統的な物
という共通点と、大の大人が、しかもチェスの対局という真剣勝負の場において、扇子で遊んでその扇子を壊す(滅多に起きないこと)
という前代未聞の状況に、著しく不愉快になりました。さらに、(これはヤバイ、こんなことが倍井さんにバレたらいよいよ男の土下座や
廊下に正座するくらいじゃ済まないぞ。)と、焦った代表鈴木は、対局中にも関わらず、なんとか元に戻そうと懸命に努力するも、当然
折れた物は元に戻らず、結局扇子はバラバラの状態に。

しかも局面はというと、メジャーピースはまだ全部残っているものの、マイナーピースはナイトと逆色ビショップで、さらにポーンの数は
一緒という、現時点ではリスクを冒さなければドローの確率が非常に高いという状況。
しかし、扇子は開いた状態にしかならず、仮にドローになって置き去った場合、開いたままなので勝ったと勘違いされる可能性が高く、
かといって持ち去ったら負けたと思われて動揺されても困るし、すべてにおいてどうにもならない状況に発展。
今大会ひたすらバントに終始していた代表鈴木も、強豪薄葉さん相手にとにかく負けないように慎重に指していたプランを遂に変更
せざるを得なくなりました。

No.4
浜松チェスサークル
VS
東北大学A
Bord
Name/Rtg.Avg
1731
2.0pt
1/2-1/2
2.0pt
1644
Rtg.Avg/Name
No.1
鈴木 陽介
1764
W
1 - 0
B
1767
薄葉 洋人
No.2
久保寺 孝夫
1706
B
1/2-1/2
W
1760
三村 健介
No.3
高安 信行
1692
W
1/2-1/2
B
1570
戸川 元一
No.4
白井 健太郎
1652(11)
B
0 - 1
W
1480(6)
朴 相敏

しかし、とりあえず倍井さんは6Rを抜け番にして既に帰ったため、怒られる心配はないことに気づいて平常心を取り戻し、
かなり怪しい(負ける可能性は十分あった)エンドゲームではあったものの、なんとか勝つことができました。

局後の「検討しますか?」との代表鈴木の問いかけに対し、「はい。」と、曇りの無い笑顔で快く受けた薄葉さんの対応は、
まさに大人の対応でした。まったく、扇子を壊してしまう誰かさんとは大違いだ(笑)。

4番のまさかの凡退で、ランナー1塁・2塁ながら2アウトまで追い込まれた浜松チームでしたが、1番がなんとか打ったヒットが運よく
2塁打になってランナーが生還。強豪東北大学Aとチームドローで、一緒に仲良く3.5ptの勝ち越しで大会を締めくくることができました。

その4.チーム解散

最終局の激闘を終えたあとは、いよいよ表彰式です。しかし、そこは地方参加者の悲哀、乗り物の予約の関係で出席できない場合も
多々あります。いつもなら表彰式を見届けたあとに帰る鈴木添乗員も、白井さんと「ぷらっとこだま」で一緒に帰る関係上、薄葉さんとの
検討を終えた19時半ごろには会場を後にしました。

品川駅に到着した白井さんと鈴木添乗員は、指定席なので確実に座れるということもあり、駅弁を買って車中で夕食を取ることに
しました。品川駅の新幹線構内の売店へ行き、ぷらっとこだまの特典である「1ドリンク引換券」で2人共お茶を手に入れた後、なんと、
駅弁に「幕の内弁当東海道」なるものがあるではありませんか!!
わけのわからない焼肉弁当を購入した白井さんとは違い、今大会の締めくくりに相応しいと「幕の内弁当東海道」を購入し、最後まで
チームキャプテンとしての責任を果たした鈴木添乗員こと浜松チェスサークル代表の鈴木でした。
※幕の内弁当東海道は、東海道新幹線関東限定弁当だそうです。

終電の20:34品川発のこだま687号に無事乗車した白井さんと鈴木添乗員。さっさと夕食を済ました2人は、相談の結果、
今大会のお互いの棋譜の検討はせずに、浜松駅に着くまでの約2時間で、今大会を振り返るべく早速執筆活動に取り掛かりました。


 あとがき

今回我々が出場した「全日本チーム選手権」は今年で第10回目です。
チームで出場するためにはメンバーを4名以上揃える必要があり、学生ならともかく、社会人でなおかつ地方からの参加者にとっては、
ある意味全国大会よりも出場するのが困難な大会でもあります。

それが6名で出場ということは前代未聞であると、大会前から注目されておりました。
しかも、それぞれの現住所を西から並べると、奈良、桑名、豊橋、浜松、小田原、横浜(実家)となり、
これはもう浜松チームというよりは、チーム東海道と言った方が的を得ているという物凄いチーム構成となっておりました。

浜松チームの最終成績
1731
3.5
6 games
メンバーの個人成績
1731
10.5
24 games
Rank
Player.Name
Rating
Get.pt
Total
No.1
倍井隆行
1761
3.0
5 games
No.2
高安信行
1692
2.5
5 games
No.3
鈴木陽介
1764
2.0
4 games
No.4
久保寺孝夫
1706
1.5
4 games
No.5
白井健太郎
1652(11)
1.0
3 games
No.6
秋永利明
1192
0.5
3 games

最終成績は「3.5pt/6games」で、参加20チーム中8位(同率6位)と初参加にしてはまずまずの成績を残すことができたのではないか
と自負しております。ただ、内訳をみると、全24pt中獲得したのは僅か10.5ptと個人成績を合計すると負け越しており、すべてのメンバー
がチームポイントに貢献しているという、まさにチーム一丸となっての勝ち越し劇でした。
そしてこの快挙は、調子に波があるHCC基本メンバーに対し、今大会も変わらずに抜群の安定度を誇った助っ人のお2人のお陰である
ことは、言うまでもありません。

上記は余談。

今大会、代表鈴木は、やはりチームのキャプテンとして出ることもあってか、ある程度の結果を残すことにこだわっていました。
一方の白井さんは、家庭を持っていて中々遠征もできないためか、結果よりも他のチェスプレイヤーとの交流に主眼を置いていました。
ただ、これ自体は代表鈴木も賛成であり、ミーハーな白井さんは、初日午前の抜け番には三村さんや内田さん、最終日午前の抜け番
には(代表鈴木も含めて3人で)岩崎さんと交流し、その他にも馬場さん(Behind the Sceneで有名)等の有名どころに挨拶しまくり、
普段は容易に会うことができない大勢のプレイヤーと交流しました。

「対局より検討室で有名になった(白井さん談)。」と、本人が言っている通り、3Rの抜け番では、久保寺さんがさっさと知人の結婚式へ
行ってしまった寂しさから、DSで遊んでいた子供からそのDSを取り上げて遊んだり、それに飽きたら今度は別の子供と憂さ晴らしに
将棋で遊び、実は二段だったその少年に逆にもてあそばれた(笑)挙句、「大人をいじめて何が楽しいんだ(白井さん談)。」と、毒を吐き
まくっていました(笑)。

実は、最終局に白井さんがドロー以上なら、最終結果が4.0ptと大健闘の結果だっただけに、(話の内容からして)ドロー以上は確実な
局面から集中力を切らしてしまった白井さんに対して、代表鈴木としては何とも言えない思いがずっとありました。

「今大会はストラテジーだけで指せた(白井さん談)。」と言い切れる程の実力を持った白井さんですが、実戦経験の不足により、
恐らく以下の要点を守ることができず、期待通りの結果を残すことができませんでした。

1.集中力を最後まで切らさない。
  特に、やることが限られている劣勢時より、選択肢の多い優勢時の方が致命的なミスをしやすい。
2.時々リラックスする。
  何時間も集中し続けることは、人間無理があります。
3.指し手が決まっていても、本当に間違いが無いか必ず一通りチェックする。
  頭の中で勝手に局面が進んでいたり、そもそも勘違いしている可能性があるため。

しかも、「これぐらいの結果の方が俺達らしいよ(笑)。」という白井さんの軽口には、(いやいや、それは貴方が言っちゃダメでしょう。)
と正直、内心むっとしましたが、よくよく今大会を準備期間から振り返ると、あれよあれよと出てくるのは、泣きあり笑いありのハプニング
の連続で、浜松駅に着くころには、「やっぱこれくらいの方が俺達らしいね(代表鈴木談)。」と、納得の3.5ptとなっておりました。

これもひとえに、犬にお尻を噛まれながらも神社へお参りした、白井さんのお陰でしょう(笑)。

最後になりましたが、本リポートにおける多くのタイプミス等を指摘して下さった、神田大吾さんと高安信行さん。
それと、いろいろなアイデアを出してくれた白井健太郎さんの3名には、この場をお借りして感謝致します。

P.S. 代表鈴木は、きっと侍大将あたりまで昇格したでしょう(笑)。


第10回全日本チーム選手権・フォトギャラリー
チーム選手権会場風景・その1
チーム選手権会場風景・その2
チーム選手権会場風景・その3
ここに写真を張り付け
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チーム内の席順(大竹さん作)
2Rでまさかの対戦の4番ボードの2人
3R開始前談笑する3・4番と緊張の1・2番
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正念場の4R
執念の5R
6R開始前に談笑する助っ人の2人
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運命の最終局4番ボード
運命の最終局2番・3番ボード
運命の最終局1番ボード
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