第45回全日本チェス選手権全国大会・参戦リポート



題名:第45回全日本チェス選手権全国大会・参戦リポート


まえがき
掲載日:2012年7月21日
著者:浜松チェスサークル元代表 鈴木陽介

参戦記(倍井さん編)

寄稿日:2012年5月14日
著者:倍井隆行さん

全国大会参加報告記

寄稿日:2012年6月28日
著者:浜松チェスサークル相談役 高安信行さん


参戦リポート掲載日:2012年7月21日
編集:浜松チェスサークル元代表 鈴木陽介
発行:浜松チェスサークル


まえがき

全国大会から3ヶ月近く経ってしてようやく掲載できました。
その理由を5月6日に私から送った以下のメール

>できたら何か簡単な参戦記的なものを書いて頂けないでしょうか?

に対する高安さんの5月10日&15日の回答を借りて説明しますと、

>5月6月とかなり仕事が忙しいので、
>報告を書くのはちょっと難しそうなんだ。


>あまり時間が経つと細かいことを忘れてしまいそう
>なので、ぼちぼちと書いていくよ。
                              高安

となります。
これだけだと何だか高安さんのせいみたいですが(笑)、高安さんは約束通り6月末に原稿を
送ってくれたにも関わらず、私が出張先の大連へ自分のPCを持参していなかったのが原因です。

ちなみに、私は大連(とにかく涼しかったのが幸せでした)出張後、ビザの関係で日本へ帰り、
東京の中国大使館へ行った夜に高安さんと1年振りの対面を果たしました。
帰り道に、次はいつ会えるだろうかという話になるまで、お互いに1年振りだったことにまったく
気が付かなかったのには驚きました。社会人になると本当に時間が経つのが早いですね。
※実は1月末の春節休暇時にHCCで会っていたことが発覚。2人共テキトー人間です(汗)。

倍井さんの参戦記は、5月12日に倍井さんから頂いたメールを一部省略してそのまま掲載します。
倍井さんからは一言、0Kという返事を頂いてます。

高安さんの参戦記は、本人のご希望通り頂いたドキュメントの内容をそのまま掲載します。
また、倍井さんからのメールに高安さんに関する記述がありますが、高安さんと食事した際に
そのまま掲載する事に関して了解を頂きました。

また、帰国した際にようやく小島慎也さんのブログを見ることができました。
いかんせん、かの地ではヤフーブログがブロックされており、丸5ヶ月間まったく見ることができま
せんでした。。改めて、本件について教えてくれた神田大吾さんとオファーを出してくれた秋永利明
さんに感謝致します。

日本へ帰国時も、途中に上海出張や何やらで中国へ戻るのが遅れ、中国へ戻ったら戻ったで
当然長期不在のツケが溜まっていた訳で、結果、何とも時期を逸した掲載となってしまいました。
心待ちにしていた多くの皆さん(流石に10人位は居ますよね(笑))、どうもすみません。

それでは、長い前置きはこの辺にして、本文をお楽しみください。

2012年7月21日、広東省の熱帯夜にて。
流離の元チェスプレイヤーより


参戦記(倍井さん編)
(以下、全国大会最終日の5月5日の夜に、私から送ったメールに対する倍井さんの返事)
メールありがとうございました。

(省略)

今年は………………ハッキリいって代表を決める年ではなかったので、あまり出場する気はあり
ませんでした。しかし、Chess.comというサイトの通信チェス(そこはOnline chessと呼んでいる)
でじっくりしたチェスをやっているうちに、『OTBのじっくりしたチェスもやってみたいな。』と思うように
なり、出場することとなりました。

肝心の結果は残念ながら、5.0-6.0と負け越してしまいました。6Rの田中寿樹君に勝って星を五分
に持ち直したのにそこからはゲーム中のプレイが安定しませんでした。前回よりも対戦相手が若干
強かったのですが相手のレベル関係無しに優勢のチェスをキッチリ勝ち点に結びつけられなかった
のは反省点です(オープニングから失敗したチェスも多かったのですが(笑))。

(省略)

最後に来年全日に出るかどうかはわかりませんが、
結果の出せるプレイヤーには絶対なっていたい!!!


                                                 倍井隆行


PS 高安さんに遅れをとったのはヤッパリ悔しい。


全国大会参加報告記
高安 信行   
1.はじめに

今回、浜松の大会で権利を獲得したのですが、浜松CCの創設者より、HP用に報告記を書くように指令があった。正直、仕事が忙しくて、
あまり力の入ったのは書けないのですが、5割の成績の記念として、簡単ではあるけれど記録を残そうと思います。



2.目標と結果について

今回の目標は、5Pでした。
これまで4回全国大会に参加したのですが、1回目(2005年)が、13Rで5P(強制bye1)、2回目(2006年)は、13Rで2.5P(強制by
e1)、3回目(2007年)は13Rで5.5P(自己都合bye4)、そこから3年のブランクがあり、4回目は昨年(2011年)で、11Rで1.5P(b
yeなし)の最下位というものです。

昨年は、直前の調子もよく、東京に引越しもして、4月当初は気合充分だったのですが、4月10日に、ぎっくり腰から坐骨神経痛を患い、
言い訳になるかもしれないけど、試合での集中力がだいぶ削がれてしまいました。去年の結果にはさすがにショックを受けて、このままで
は終われないな、と思いました。幸いにも今年、運良く浜松で権利を獲得して、リベンジの機会をゲットしましたが、直前の調子はいまいち
で、5Pは客観的に見て苦しいのが実情でした。

これまでの経緯を少し冗長気味に書いてしまいましたが、今年はなんと5.5Pで5割を確保できました。とはいえ、タイブレークは5.5Pの
中では一番下で、順位は36人中、22位でした。ただ、参加時点のレーティング順位は30位(1631点)だったので、善戦したとはいえる
でしょう。今回は自分よりレーティングが下の相手にはまったく取りこぼさなかったのが、良かったです。



3.大会の経過について

1Rの相手は福田豊秋さん(1816点)で、初対決である。私の白番で戦型はQGDのエクスチェンジバリエーションになった。この対局は、
私のポカでピースダウンをしてしまった。相手が席を立とうとした瞬間に、反射的に指した手が大悪手だった。こういうことは、今後は二度と
しないように気をつけなければ、と反省した1局でした。

2Rの相手は慶応の中村尚広君(2058点)だった。彼とは愛知県選手権、百傑戦に続いて3度目の対戦で、ここのところよく当っている。
これまでは2回とも白番だったが、今回は初の黒番である。戦型はイングリッシュになった。とりたててひどいポカとかはなかったが、実力
どおりの展開で、負けてしまった。1日目に2連敗だが、レーティング下位者にとっては、1回戦加速のスイス式ではやむを得ない面もあり
ます。

二日目の第3Rの相手は、北海道の伊藤克英さん(1528点)だった。札幌の大会で1度対戦したことがあり、今回2度目の対戦ということ
になる。私が白番だったが、戦型アルビンカウンターギャンビットになった。この定跡については、準備不足で戸惑ったが、なんとか白ペー
スで終盤戦に持っていくことが出来た。こちらが4対3でワンポーンアップのルークエンディングになったが、相手が、ポーンを取るかわりに
ルークを交換してしまい、こちらが勝ちのポーンエンディングになった。優勢ながらもまだまだ続くと思っていた勝負が早く決着がつき、ラッ
キーではあった。

4Rの相手は東北大の三村健介君(1798点)で、今年の正月に松戸の大会で対戦しており、彼とも2度目の対戦ということになる。私の
黒番で、戦型はシシリアンのマロツィバインドになった。自分なりに善戦はできたつもりだったが、やはり実力どおりの結果で負けてしまっ
た。これで、二日目が終わった段階で1P、目標の5Pに早くも赤信号がともる、という状況になった。

3日目の第5Rの相手は、中川笑子さん(1694点)だった。レーティングも比較的近いし、白番だったので、勝ちか、悪くてもドローは取り
たいところである。戦型はセミ・スラブだった。序盤、自分では快調に指していたつもりだったが、実際は互角の形勢だったようで、そのう
ち、いつの間にか黒が良くなり、最後は2ポーンダウンのナイトエンディングを粘っている状況だったが、最後に相手が間違えて、なんとか
ドローをゲットした。

6Rの相手は袴田栄治さん(1662点)で、私が黒番だったのだが、実は袴田さんとはこの対局までに、12回対戦していて、そのうち私の
黒番が9回あり、またか、という感じだった。戦型はシシリアンのアラピンで、形勢は一進一退あったが、66手まで指して結局ドローとなっ
た。6局終了して2Pと、崖っぷちの戦いが続いている。

4日目の第7Rの相手は、北海道の西森敏之さん(1697点)で、過去2回対戦している。今回は白番だったが、戦型はベンコーギャンビッ
トだった。この1局は完敗だった。ベンコーの対策をしっかり練らねば、と思った。残りの対戦は下位者が中心になってくると思うが、3勝1
敗か2勝2分でないと5Pに届かない。次はなんとしても勝ちたいところである。

その8Rの相手は、長谷川愛美さん(1592点)で、初対戦である。私の黒番で、ベノニの出だしだったが、イングリッシュにトランスポーズ
した。いずれにせよ、この大会で初の対d4だった。この試合も序盤から苦戦をするという展開だったが、白が36手目に悪手を指して、逆
転し、久しぶりに勝利を収めた。これで、8Rで3P、明日に1Pを取って、最終局に勝って5Pという算段をしていた。

5日目、ここまで来ると完全にチェスモードの生活で、仕事のことも忘れ、至福の日々といえるが、その幸せな日々も明日までである。それ
はともかく、9Rの相手は、大阪の若手強豪の平尾聡至君(1853点)である。彼とは、大阪のアンパサンでよく指していて、ほぼ互角の戦
績だったが、去年からレーティングを200ほど上げており、今伸び盛りである。来年は受験があるが、受験が済んで、関東の大学にやって
くることになるとさらに実力がアップし、完全に手の届かない存在になる可能性が高い。さて、試合の内容であるが、戦型は私の白番でク
ラシカルダッチになった。これも途中から黒の優勢の局面が続くことになったが、根性の粘りで最後はなんとかパーペチュアルでドローにす
ることができた。9Rで3.5Pとなり、まだ目標達成の可能性を保持している。

10Rの相手は、神戸の小学生の大田和優斗君(1572点)で、初対戦である。ここはぜひとも勝っておきたいところである。私の黒番で、
戦型はシンメトリカルのイングリッシュだった。このゲームは黒番ながら、こちらが終始主導権を握っている展開だった。相手の大多和君は
1手指すごとに席をはずしているような感じだったが、こちらは冷静に指し続けて勝利。これで、10Rで4.5Pとなり、5割の可能性も見え
てきた。

さて、最終日、11Rの対戦相手は、東北大の戸川元一君(1616点)だった。レーティングが近く、成績もここまで同点で、最終局にふさわ
しい相手といえた。戦型は私の白番だったので、多分ある戦型になるだろうという予感があった。彼とは、2年前にチーム選手権で対戦し
ており、そのとき、私の白番で、KIDのクラシカルのバヨネットアタックから、ルークサクリファイスをする定跡になった。当時、これを研究し
ていた私は相手に大きく時間の差をつけて優位に戦いを進めていた。結果はドローだったが、この1戦は、ホワイトナイツのHPに戸川君の
自戦記が載ってあり、彼も対策を持っているだろうから、また、この戦型になるかも、という予感があった。そして、実戦も予想どおりその戦
型になり、白の21手目までは、ほとんどノータイムに近い感じで、まわりのプレイヤーや観戦者の方々もすこし驚いていたようだった。下図
がその局面である。



21.Bb2の局面です。前回の対戦では、ここから、 Rad8 22.Qd2 d4 23.Re1 Rxf3?!という展開だったから、黒が手を変える
のは、23手目くらいかな、と予想していた。しかし、今回、戸川君は、ここで、Qxb4と来た。このあと、22.Rb1 Qf4 23.Bd4 b6と
なり、コンピュータはここで、黒が優勢と判断している。23手目はBa3として、Rfe8 24.Rxb7だったら、白が良かったようだ。黒として
は、22手目は、ナイトにひもをつけるQh4か単にb6(ただし、23.Bg7が気になるか)とすべきだったのかもしれない。

この局面までは、快速戦のようだったが、ここから、お互いに時間を使いだして、普通の対局風景にもどった。試合の展開はコンピュータの
分析では、黒良しか互角の形勢が続いていたが、黒が35手目に悪手を指し、白の次の1手でリザインされた。



4.おわりに

大会が終わって2ヶ月近くたち、こまかいことをわすれてしまったが、全国大会はやはり楽しかった、というのが、いつわらざる気持ちであ
る。今回の報告記は棋譜の紹介もなく、局面図も1つだけで、冗長な文章が続き、読みにくかったかもしれませんが、ご容赦いただければ
幸いです。(了)


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