東海オープン2011参戦記



題名:東海オープン2011参戦記

第1局面

第2局面

第3局面

参戦記投稿日:2011年6月4日
参戦記著者:鈴木陽介

編集:浜松チェスサークル元代表 鈴木陽介
発行:浜松チェスサークル


東海オープン2011参戦記

まえがき

去る2011年5月22日、日本チェス界における活動の締めくくりとして、
浜松チェスサークル元代表の鈴木は東海オープンに参加してきました。

とりあえずは最後だということと、神田さんの全国大会参戦記に触発されたこともあり、参戦記としてまとめることにしました。
今度こそ最後ですので、乱文・暴言?悪しからず。

大会開始前

当日朝、名古屋地下鉄の名城公園で下車。
電車から降りる時に偶然高田さんと遭遇。2人で改札を出ると、さらにちょうど地図を見ていた木下さんと遭遇。
3人で会場へ向かいました。

それにしても、この2人を含めてその後に会話した水本さん、藤澤さん、木田さんからことごとく、
「今日も観戦ですか?」
と聞かれたことには愕然としました。
(オレってすっかりそういうイメージになってるのね。)
とガッカリしましたが、もちろん
「朝から観戦には来ませんよ。」
と返答。公式戦は久々ですので、現実的には勝ちこせれば良いなぐらいに思っていましたが、
お陰様でが俄然やる気が出てきました。

そんな中、大阪から遠征して来た水本さんに加えてルーイマンさんとFM上杉さんが登場。
(あれ?東海オープンって賞金トーナメントだっけ?)
と勘違いする程の参加者のレベルの高さに驚きましたが、FM上杉さんは参加しないとのこと。

じゃぁ何しに来たんだ?と皆疑問に思いましたが、どうも東海オープン開催中はずっとテニスをしていたみたいです。
確かFM上杉さんのお父様は去年から名古屋に転勤されており、その関係で今回来ているらしく、テニスに夢中になりがらも
しばしば観戦している姿を見ました。

いずれにしても、ご両親の話によるとチェスはもう引退したとのこと。うーん、それで良いのか?
表彰式の前に本人にも直接聞いてみましたが、今年の1月以来チェスをしていないとのことでした。
もったいない気もしますが、そこは人それぞれですので、今後何をやるにしても一生懸命やってもらいたいものです。

それはともかく、TDの堀江さんの挨拶が始まりました。
今回の参加者は14名で、大会参加費5,000円(前払だと4,000円)の内、堀江さんを加えた計15名から一人につき2,000円、
計30,000円を新聞社を通じて東日本大震災の義援金として支払われるとの説明がありました。

これは素晴らしい試みだと思います。震災があったからといってやたらイベントを自粛するよりは、この様にイベントはちゃんと実施した
上で参加費に義援金を上乗せして支援するという方法は他のイベントでもどんどんやったら良いと思います。
誰だって我慢するのには限界がありますから、この様に前向きな方向で頭を働かせた方が良いと思います。

そんなこんなで、いよいよ対局開始です。

1R

黒番で水本さんと対局。
相変わらずいい加減なオープニングを咎められて瞬殺されました(悲)。全ボード中一番最初に終了。
(流石にブランクがあるとキツイか)と落ち込みましたが、せっかくなのでちゃんと検討し、残り3試合の長丁場に備えて
少し多めに昼食を摂りました。

ちなみに、水本さんは睡眠不足がパフォーマンスに影響するので前日はしっかり寝るとのことです。
私も近年の経験上、睡眠の重要性には気づいていますが、やはり前の日は気持ちが高ぶってよく眠ることができません。
今更手遅れですが、やはり準備は前々日までに済ませ、前日は早めに床に就くのが賢明です。

2R

白番で岩城さんと対局。
その場の気分で最近余り使っていなかったe4を指し、うろ覚えのオープニングで大ポカをするも何とか序盤を乗り切りました。
ただ、そこから血液が胃に取られたせい(ということにして下さい(笑))で考えが全くまとまらず、意味不明なマヌーバリングに終始し、
なんとかエンドゲームに持ち込んだという状態でした。

先程とは反対にこのボードが一番最後まで残っていましたが、最後は黒が無理攻めしてくれたお陰で何とか勝利。
局後の検討でも答えましたが、終了直前の局面まではドローオファーされたら多分受けていました。

3R

白番で高田さんと対局。兄弟弟子対決です。
師匠(藤澤さん)の過去の言葉をまとめますと、高田さんが「一番目の一番弟子」で私が「2番目の一番弟子」となります。

それはともかく、(さっきe4だったからd4だ)とまたもや思い付きで始めたオープニングでしたが、試合にもようやく慣れてきたお陰か
過去2試合よりはうまくいきました。ただ、白番として別段アドバンテージを獲得したわけでもなく、結局ドローで試合を終えました。

今回は一応参戦記です。ドローなら誰にも迷惑をかけないだろうということで、棋譜解説は局面評価を主題としてこの3局目を
取り上げたいと思います。高田さんのブログ、「Magic on Chessboard」では、「3Rは黒番でさほどチャンス無くDraw」と、さらっと
通り過ぎていましたので(悲)、代わりに私と最近購入したRybka4により解説したいと思います。


□鈴木陽介 (Suzuki, Yosuke)
■高田侑一良 (Takada, Yuichiro)
東海オープン2011 第3局

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. Bg5 Be7 5. Nf3 O-O 6. Rc1 b6 7. e3 Bb7 8.Be2 Nbd7
9. O-O dxc4 10. Bxc4 c5 11. Qe2 Nd5 12. Bxe7 Qxe7 13. e4 Nf4 14.Qe3 cxd4

白はわざと?!怪しい手順を選びつつも以下の局面となりました。
ここで白は、ナイトを取るかポーンを取るか、それが問題です。

第1局面(下図)



白としては、15.Qxf4の後に15...e5とされると、クィーンを逃がして次に16...dxc3とされた後、e4のポーンに集中攻撃を掛けられて
困るという判断で結局ポーンを取りましたが、Rybka4によると15...e5には16.Qg5という返し技で白優勢とのことです。

15. Nxd4

そして、白は黒の次の手を甘く見ていました。

15...Qg5
直ぐに思いつくのはg3ですが、a8-h1のスレッドが残っている現時点では問題外です。
では次はどの駒を動かせば良いでしょうか?

16. Qg3

メイトを狙われている為、実質的に白はこの一手です。ただこれだと白はダブルポーンを抱えた
エンドゲームに突入する可能性があります。これに対して黒の手は?

第2局面(下図)



16...Qf6

黒はクィーンを交換しない手を選択しました。
局後の検討での話によると、この段階でエンドゲームに持ち込むことは得策でないと判断したとのこと。

それでは、仮に16...Qxg3ととエンドゲームへと進んだ場合の局面を考えてみましょう。

この場合、17.fxg3にしろ17.hxg3にしろ白はgファイルにダブルポーンを抱えることになります。
まだクィーンが残っている段階なら17.fxg3としてf1のルークにセミオープンファイルを与えてアタックに生かすという選択もありますが、
クィーン不在のこの段階では17.hxq3が自然だと思います。エンドゲームといってもまだピースはお互い5つも残っていますし、
ポーンの島もお互い2つですので局面自体は互角だと思います。

一応Rybka4で17.hxg3の場合をアナライズしたところ、
17.hxg3 Ne5 18. gxf4 Nxc4 19. Rc2 Rac8 20. Rfc1 Rfd8 21. Ncb5 Nxb2 22. Rxc8 Rxc8 23. Rxc8+ Bxc8 24. Nxa7
と進み、ほぼ互角との評価でした。(下図)



つまり、勝敗が付いた場合はエンドゲームの力量の差ということになります。
それでは本譜に戻ります。次は、

17. Rfd1 Ne5 18. Bf1 Rad8 19. Ndb5

と進んだ以下の局面です。
白はa7のポーンを取るつもりでしょうか?
黒はa7のポーンを捨ててアタックするのでしょうか?

第3局面(下図)



局後の検討では、黒は白によるb5のナイト跳びを甘く見ていたとのことですが、5/29の白井さんとの検討では、白井さん曰く、
「キングサイドに駒を集めている黒の方が優勢。」との見解でした。

確かにこのクィーン+ダブルナイトというのは非常に強力で、上杉謙信の車懸りの戦術の様にナイトペアを巧みに回転させていろんな
駒に当てながらテンポを稼ぎつつ、キングに強烈なアタックを加えてきます。

その辺もあって、白の19.Ndb5の狙いのひとつは、このb5のナイトをd6からc4へと移動させて少しでも
その脅威を削ぐことでした。

ちなみにこの時の私の局面評価は、取る気のないa7ポーンへのハッタリも含めてほぼ互角。確かにキングサイドへのアタックは気に
なりますが、その辺を考慮してビショップをf1に戻しましたし、スペースは白の方が広いのでこれはこれで一局という試合になるなと
感じていました。Rybka4の評価互角との評価でした。

その後は

19...Nh5 20. Qh3 Nf4 21. Qg3 Nh5 22. Qh3 Nf4

となったところで黒からドローオファー。
前回の東海オープンで彼からのドローオファーを蹴って負けた苦い記憶が蘇ります。
白としては、この試合も含めて2連勝すれば十分入賞圏内ですが、実は2試合目の長時間ゲームの影響もあってこの時間が睡魔の
ピークでした。しかも、15...Qg5のところで危うく他の駒を動かそうとしてメイトされかけましたし、仮に勝ったとしても相当時間がかかり
そうでしたので、最終局に備えて素直にオファーを受けました。

ちにみに、Nh5とクィーンに当てられた局面ではQe3かQh3しか行き場がありませんが、前者だとさらにNg4とクィーンに当てられて
これこそ車懸りの戦法を食らう羽目になりますので、とりあえず様子を伺うためにQh3と指しました。
いずれにしても、お互いに持ち時間が少なかったので妥協してドローにしたといったところでしょう。

1/2-1/2

高田さんのブログを引用すると、
「黒番では対d4に関してQueen's Indianを使っていたのを変えます。手堅いのですが、黒から主導権を掴むのが難しいため
もっと乱戦になるようなopeningを勉強してみます。」
とのことです。

私は局面評価の基本はドローの局面からだと思います。ドロー局面を知ってこそ、それとは違うから優勢や劣勢と判断できますし、
どうすれば良くなるかやどうすれば互角に持ち込めるかなどの判断もできるのだと思います。

と、適当にまとめつつ棋譜解説を終わります。

4R

黒番で藤澤さんと対局。師弟対決です。
私としては、締めくくりの相手として申し分ない相手との対局になりました。
前局が睡魔のピークだったこともあり、爽快な気分で対局に臨むことができました。

師匠の初手はc4で決まっています。それに対していつもe5を指していましたが、
公式戦では勝ったためしがなかったため、別の手で挑みました。
それが功を奏したのかなんとか勝利。

局後に相性が悪いと愚痴られましたが(笑)、前述の通り黒番では初勝利でありますし、私や白井さんのようなタイプは相手が
強ければ強い程気合いが入りますので、正直毎回かなり慎重に指してます。相性というのはただの結果論であり、個人的には
別段与し易いという印象はありません。

ところで、この藤澤・高田師弟は、大会開始前に揃って
「この会場とは相性が良くないんだよね。」
と弱気な発言をしておりましたが、もはやそんな言い訳をしている段階ではありません。

毎週水曜日の師弟トレーニングは、さらに気合いが入って昼からやっているみたいですので、2人ともこれを機にさらに奮起して
頑張ってもらいたいです。

ここでも高田さんのブログを引用すると、
「大会後、水曜日の藤沢さんとの対局での持ち時間を15分+30秒追加から40分+30秒追加に変えるようにお願いしました。
数をこなす段階から質を上げるより実戦に近い持ち時間で練習します。」
とのことです。

持ち時間については一長一短ですが、結果を受けて反省し、それを基に次のアクションことは良いことだと思います。
いずれにしても、パワーアップした師弟と次に対局するのがより楽しみになってきました。

5R?

大会終了後、藤澤さん、高田さん、優勝したルーイマンさん、将照さん、倍井さん、私の6人(席順)で、
名古屋駅の地下街で食事をしました。(デジカメを忘れたので写真はなし)

ルーイマンさんはオランダ人で、最初は東京にいて全国大会にも出場していましたが、名古屋に転勤して以降は名古屋チェスクラブの
大会によく出場していました。最近は見かけなかったのでその辺を聞いたところ、最近までオランダに帰国しており、4月からまた名古屋
で働いているとのことでした。日本語もゆっくり喋ってもらえればわかるとのことでしたが、基本は英語での会話となります。

ということで、流暢な英語を操る藤澤さんの独壇場となりましたが、宴たけなわとなったところで藤澤さんが突然、
「酔ってきたのでオランダ語で会話する。」
と宣言して本当にルーイマンさんとオランダ語で話し出したのには皆驚きました。
さらに、私が若干かじっている中国語も知っているみたいでし、そもそもロシア語を喋れるのは知っていましたから、
「一体何カ国語喋れるんですか?」
と問いただしたところ、挨拶程度なら十カ国以上可能との回答でした。師匠恐るべし。
酔ったせいもあってか、相変わらずルックダウン並みのオヤジギャグを連発して減点を重ねつつも(笑)、
改めて藤澤さんの社会人レーティングの高さを思い知らされた一同でした。

ということで、5Rは乾杯、じゃなくて完敗(笑)。(2ポーンダウンくらいかな?)
つまり、この東海オープン2011の5回戦?において兄弟弟子対決、師弟対決共に引き分けで終え、
両方とも決着は次回までお預けとなりました。

実は今回、ちょうどこの5Rに参加した4人(参加を知らなかったルーイマンさんを除く)と対局したいと思っていました。
というのも、倍井さんは常に工夫してくるプレイヤーなので必ず未知の局面になりますし、将照さんとは結局一度も公式戦で対局する
ことができなかったからです。まぁでも、彼らの内の半分と対局できたことですし、ブランクがあったにしては勝ち越しは悪くない結果
だと思いますし、さらに5Rまで楽しめたことですし、総合して楽しい遠征だったと思います。

おわり

P.S.
流浪の棋士はこれより修業期間に入ります。

2011年6月4日
浜松チェスサークル元代表 鈴木陽介


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