第五部:浜松の大会へのコメント |
(このリポートは、渡辺暁さんから代表鈴木に送られてきたメールの内容を元に、代表鈴木が編集致しました。) 先日浜松で行われた静岡県選手権では、幸い優勝することができました。 どの試合も序盤である程度満足な流れにすることができ、初戦、2戦目、3戦目はそのまま勝ち、 でしたが、第4戦目では勝ちを逃してそのまま2ポーンダウンになってしまい、かなりあせりました。 (しかも読み切るべきところで時間を使って結局勝ちを発見できなかったため、後半はずっと残り一分で戦う羽目になりました。) 最後はかなり追い込んだところで相手が一手メイトを見落としてくれて勝ちましたが、その手が見えていれば結果は 違っていたかもしれません(ただ、閉会式で言っていたほど、簡単に負けではなかったようです)。やはり不利なときでも、 逆に相手にとっては有利局面をきちんと勝つのは難しいわけですから、まだまだチャンスはあります。 そこであきらめずに攻めたのがよかったようです。普段はポジショナル・プレイを標榜しているのに、 はじめて全日本に出た頃のような、めちゃくちゃな攻めのチェスで、少々お恥ずかしいのですが。 その他にそれぞれのゲームについてコメントをしておきますね。 第1局 1局目はビショップをナイトとあっさり交換してはダメ、 (以下代表鈴木のコメント) 『図は、白の木下さんが、16.Bg4とビショップを出した局面。』 『暁さんの推測によれば、 「多分f3をあとでつくことになるから、白マスビショップをその前の段階で前に出さなければ、という先入観があったのだろう。」 けど、そこがよくなかったと思います。とのことです。』 『その後、黒に16...Nf6と当たりをかけられるものの、白は手損を嫌ったのか、あえて引かずに17.Nde4と指しました。』 『その結果、17...Nxg4 18.Qxg4 Ne3!というタクティカルを招いてしまいましたし、やはりビショップは温存した方が良いということでしょう。』 『いずれにしても、不必要な駒交換は避けるべきで、特にビショップをナイトと交換する場合はなおさら気を使いなさいということです。』 第2局 2局目は、15...Qf6のような一つしか狙いのない、しかもそれがすぐに防がれてしまうような手はよくない、 (以下代表鈴木のコメント) 『図は、黒の堀江さんが15...Qf6と指した局面。』 『白が無視すると、16...Nxh3+ (もし17.gxh3と取り返すと17...Qxf3でほぼ勝負あり)とされて非常に危険です。』 『結果は、白が16.Nh2と指し何も起こらず。他にリスクもありません。でも確かに黒が狙いたくなる気持ちはわかりますけどね。』 第3局 3局目は、ポイゾンド・ポーンのような難解な定跡は自信がなければ入ってはダメで、 むしろ8.Nb3とポーンを守っておいて中盤勝負を挑むような気持ちがほしかったし、その方がこちらもいやだった、 (以下代表鈴木のコメント) 『図は、白の三村さんが7...Qb6に対して8.Qd2とした局面。』 『ここで白が8.Nb3と指す手は確かに手損していそうですが、黒もポーンをb5に進めるためにはクィーンがもう一度動く必要があります。』 『いずれにしても、徹底的に研究しているラインでなければ、8.Qd2 Qxb2から始まるポイゾンド・ポーン(ポーンギャンビットの一種) の様なプレイは避けるべきとの暁さんの見解です。』 『暁さん曰く、 「7...Qb6 8.Nb3 Qc7となった形は、白がもう一回9.Nd4と出ると手損になるので、一応黒満足ということになっています。」 ただ、それでもあの攻め合いは怖いけどね。とのことです。』 『なお、今回のことは別として、暁さんの意見としては、変わったオープニングを勉強する時間があるなら、中盤、終盤を勉強した 方が良いのではとのことです。確かに、我々アマチュアは時間が限られていますから、難解な定跡を一所懸命勉強するよりも、 その分中盤や終盤の勉強をした方が効率が良いということでしょう。まぁ序盤の勉強が好きでたまらない人は別ですが(笑)。』 第4局 4局目は序盤で黒、センターを軽視しすぎで、私が19.Nf6+を発見していれば、少なくともクイーンを取れていた (まだ難しいにせよ)わけで、もう少しセンターを手堅く、という姿勢がほしい、といった感じになるかと思います。 (以下代表鈴木のコメント) 『図は、黒の将照さんが18...Nb4とした局面。』 『実戦では、白が19...Nc2によるフォークを嫌ってか19.Qc3と指しましたが、19.Nf6+で決まっていたというご指摘。』 『理由は、チェック等で先手を取りながら白のクィーンが横に動けば、白はd1のルークで黒のクィーンを取ることができます。』 『19...Kh8なら20.Qh4、19...gxf6なら20.Qg4+、19...Bxf6なら20.Qg4 Qc2 21.exf6 g6 22.Qg5といったところで、いずれも勝負あり。』 『さらに進んで次は、<勝ちを逃してそのまま2ポーンダウンになってしまい、かなりあせりました。>という局面。』 (以下代表鈴木のコメント) 『図は、黒の将照さんが33.c5に対して33...Nd5と指した局面。』 『ここで、白が34.Rxd5と猛攻をしかけるものの、実は勘違いしていたという話。』 『そして最後は、問題の<最後はかなり追い込んだところで相手が一手メイトを見落としてくれて勝ちました>という局面。』 (以下代表鈴木のコメント) 『図は、白の暁さんが37.Nf7とした局面。』 『黒が無視すれば、38.Nh6#と教科書に出てきそうな華麗なメイトが決まるところです。』 『恐らく黒の将照さんは、f7のナイトでd8のルークに当たりを掛けられているし、それならばと、うっかりd5のクィーンを取ったのでしょう。』 『仮に私が自分のこととして考えても、この土壇場で瞬間的にナイトとビショップとポーンの連携でメイトになるとはまず思いません。』 『暁さん曰く、 「最後のNf7は、本気で勝ちになったと思って指した。罠を仕掛けたつもりは毛頭なかった。」 とのことです。また、コンピュータの解析によると、37.Nf7の後に37...Re8という手があり、依然として黒の方が有利との結論だそうです。 いずれにしても、将照さんにとっては残念な終わり方ですが、また一つ勉強になったのではないかと思います。』 これだけでは実際の相手の人たちしかわからないと思いますが、 皆さんも棋譜を並べてみればご理解いただけるのではないか、と思います。 また、今回自分のゲームが熱戦続きであまり人の試合を見る余裕がなかったのですが、 最後の藤澤さんのゲームはポジショナルとタクティクスの融合した、よいゲームでしたね。 あんな指し方がレーティング2000前後のレベルでも定着してくると、日本のチェスも成熟してくるのではないかと思います。 最後に、閉会式でも申し上げましたように、鈴木さんこれまでどうもお疲れさまでした。 おかげさまでバブーリンさんもお連れすることが出来ましたし、私自身もラテンアメリカ研究者として、 ブラジルやペルーの人が多く住む浜松におじゃまして、個人的に貴重な経験をさせていただきました。 また、鈴木さんと知り合ったのは東北で、その時にやはりお会いした三村さんが今回も参加してくれて、とてもよかったと思います。 また、名古屋からも堀江さん、藤沢さんはじめ参加者が大勢いらしていましたが、私ははじめて(ジュニア以外で)優勝したのが 名古屋オープンで、さらにいうと私が学生チェス連盟の代表として学生選手権をオーガナイズしたときに、まだ学生だった堀江さんが 来て下さったのでした。それ以来ずっと、名古屋でコンスタントに活動を続けて下さっていて、頭が下がる思いですし、ご縁を感じています。 今後も東海地区のどこかでイベントがあるときは、時間が許せばまた遊びに来たいと思いますし、 お手伝いできることがあれば、色々とさせていただければ、と思います。次の機会を楽しみにしています。 渡辺 暁 寄稿日:2011年2月21日 掲載日:2011年2月24日 校正日:2011年2月28日 著者;渡辺暁さん アシスタント:鈴木陽介 編集:鈴木陽介 |
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