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GMバブーリン氏のチェスレクチャー・リポート



開催日:2009年5月22日(金)
開催場所:静岡県浜松市中区 南部公民館 第1講座室

主催:浜松チェスサークル
講師:GM Babulin, Alexander 氏
通訳:FM 渡辺 暁 氏
司会:浜松チェスサークル代表 鈴木陽介


18:00 開講

第一部 GMバブーリン氏の過去の名局解説 (詳細
第二部 GMバブーリン氏によるエンドゲームレクチャー (その1)(その2
第三部 GMバブーリン氏による同時対局 (ベストゲーム

20:55 記念撮影
21:00 閉講

追加報告 (その1)(その2


作成日:2009年9月27日
編集:浜松チェスサークル代表 鈴木陽介
発行:浜松チェスサークル


第一部 GMバブーリン氏の過去の名局解説

[Event "Commonwealth Championship 1999"]
[Site "India"]
[Date "1999.4.17"]
[Round "-"]
[White "Baburin, Alexander (IRL) <2556>"]
[Black "Sharma, Dinesh K. (IND) <2377>"]
[Result "1-0"]
[ECO "Queen's Gambit Declined: General (D30)"]


インドでシャーマサン(後にIM)と指した一局。
データベースで相手を調べて臨んだ。どういう展開になるかが重要になる。

1. d4 d5
2. c4 c6
3. e3!? Nf6
(3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4) と進行するクラシカル・スラブは好みではない為、この変化を選んだ。
4. Bd3



*****ここでサイドラインを一つ紹介*******************************:

4. … e5!
5. dxe5 dxc4



6. Be2
(6. Bxc4? Qxd1+ 7. Kxd1 Ng4!) とされ、Ng4が強力である。
6. … Qxd1+
7. Bxd1 Ng4
8. f4



このラインの場合、キングサイドにおいては、白5ポーンVS黒3ポーン、
クィーンサイドにおいては、白2ポーンVS黒4ポーンの戦いとなる。

*************************************************************

4. … e6
5. Nf3 Nbd7
6. Nbd2 c5?!
(6. Nc3 dxc4 7. Bxc4 b5 8.Bd3 Bb7) 等の様に進行するのがセミ・スラブ。



これで、タラッシュバリエーションと同じポーンストラクチャーだが、
白の方が駒一つ展開している。よって、可能な手だが最善手ではない。

7. O-O cxd4
8. exd4 dxc4
9. Nxc4 Be7



これで、IQP (Isolated Queen's Pawn = Isolani) のポジションとなった。IQP側は、浮いたd-pawnが弱い為、
このままエンドゲームに突入すると不利だが、ピースを展開し易いというアドバンテージがある。

そして、ここで白はプランを考えなければならない。ゲームは長いので、ずっと先のことまでは
考えられないが、差し当たってどうするかを考える必要がある。

まず、最初にc1のビショップをどうするかを考えた。10. Bg5 はどうだろうか・・・ (10. Bg5 O-O 11. Re1 Nd5)
これではビショップを交換せざるを得なくなる。通常、駒の交換は黒にとって有利に働く。
よって、実際は 10. Bf4 を選択した。

10. Bf4 O-O
11. Rc1 Nd5
12. Bg3 N7f6?!



恐らくミスジャッジであろう。ナイトを展開させるよりもまず、(12. …b7) とし、
c8のビショップをどの様に展開させるかを心配する方が先である。

13. a3 h6?

ただキングの守りを弱くするだけの無駄な手である。
この時点における黒のメインプロブレムは、c8のビショップが眠ったままという点である。
従って、ここでは (13. …Bd7) とすべきである。

14. Re1 Ne8?



ここで、相手がこのポジションに対して何もわかってないということに気がついた。
Ne8は目的を持った手だが、95%は悪い手である。
強い人は良く考えた上で、今回は例外だと考えて指している。

15. Bb1 f5
ここで、30秒考え・・・。
16. Be5!? Nef6
ここで、1分考える。

(17. Nh4) 等いろいろ手があるが、まずマヌーバリング(Maneuvering = 駒の展開)を考える。
働いていない駒を活用することは、99%の場合において正しいからだ。

17. Ba2!!



17. … Re8
18. Ne3 Nxe3
19. Rxe3 Nd5

もし、ここで下がったら相手にやりたい様に指されてしまう。
この辺りで相手へ直接的に攻める手があるのではと思った。

20. Bxd5!?
白はすべての駒が働いているが、黒はナイトが働いているだけなので交換することにした。

20. … Qxd5
(20. … exd5 21. Bc7 Qd7 22. Qe2) となり、黒必敗。



ここでしっかり考える。もし、ここで白が何もしなかったら、
黒の白マスビショップにBd7からBc6と出て来られて何もない。

最初の世界チャンピオンであるシュタイニッツは、次の名言を残している。
「アドバンテージがある方は攻めなければならない。
攻めることにより、アドバンテージを失ってしまうことを避けるのである。」

21. Bxg7!! Kxg7
22. Ne5 Bg5
23. Qh5 Re7
24. Rg3!



24. … Qxd4
25. Rxg5+ hxg5
1-0

この後は、恐らく・・・
26. Qxg5+ Kf8 (26. … Kh8? 27. Qxe7)
27. Qf6+ Kg8 (27. … Ke8?? 28. Qh8#)
28. Qxe7 Qxe5 29. Qd8+!! Kh7 30. Rc7+ Kh6 31. Qf8+ Kh5
32. Qf7+!? Kg5 33. Qg8+ Kf4 34. Rc4+ Qe4 35. Qg3#

白の勝因は、最終的に相手のクィーンサイドのルークとビショップを使わせなかったことである。
普通ならポーン1つでも捨てるのを躊躇する方だが、この日は初戦で睡眠不足だった。
大体、大会の前半は睡眠不足からサクリファイスが出るが、後半になって睡眠不足が解消される
につれてサクリファイスは減ってくる。サクリファイスで勝つと家中お祝いになってしまう。

浜松チェスサークルメンバーからの質問に対する回答

Q1. ピンをするタイミングは、相手がキャスリングをする前と後のどちらが良いですか。

A1. 大抵の場合、相手がキャスリングした後だ。
   なぜなら、相手がピンをしているビショップを追い払うために、キング前のポーンを突くことにより、
   キングの守りが弱くなるからだ。

Q2. 何手先まで読む必要がありますか。

A2. その質問には既に先人が答えている。
   「自分は、一手しか読まない。但し、相手より一手先なのだ。」
   (マーシャルの「相手より一手先が見える。」と レシェフスキーの「最善の一手しか見えない。」より)
   つまり、読みより展開等の戦略の方が大事である。(必ずしも読む必要はない。)
   例えば今回の試合では、白が11手目でa1のルークをc1へ展開することは、読み以前の
   当たり前な感覚 (= Common Sense) である。そして、ルークをc1へ展開したことが、後の
   コンビネーションで役に立った。
   読みに関して言えば、黒17手目のRe8で初めて計算して白18手目のNe3を導き出した。
   相手のクィーンサイドのルークとビショップが働いていないことがわかっていたので、
   どうするべきかは直感的にわかったが、確認の為に読みを入れた。
   こういうところで自分が積み上げてきたアドバンテージをさらに積み重ねる為に、自分と
   相手の駒を交換する手も考える。
   自分を含めたGMは、駒の交換が絡む手で読みを入れる場合が多い。
   そしてNe5の局面から勝つのは簡単だが、その局面まで持っていくことにチェスの難しさがある。

Q3. 時間の使い方のコツを教えて下さい。

A3. まず、計算し過ぎないことが大事である。
   タイムトラブルに陥るのは、考えているからではなく迷っているからだ。
   迷っている間に時間が過ぎてしまう。
   だから、自信を持って指せば良い。それで負けても、そこから学べば良いのだ。
   また、自分はマラソンの経験はないが、マラソンで重要なのは途中の100メートル
   を疾走することではない。
   よって、完璧な試合を目指さず、(無謀な手を出来るだけ避けて)地に足を付いた
   「良い試合」を心懸けなさい。


第二部 GMバブーリン氏によるエンドゲームレクチャー その1

ポジション T



この時点では、候補として以下の3つの手が挙げられる。
@ 1. c5
A 1. Bxe5
B 1. Kf2

まず、@は (1. c5?! Nc6) で悪手。
次に、Aはどうだろう。駒を交換する手は、その後絶対手を指し続ける必要があるので、
(特にピースを)交換する前によく考えなければならない。
では、Bはというと (1. Kf2? Nd3+) でb-pawnが落ちるので問題外。

1. Bxe5! fxe5
2. b5 Kf7
3. c5!!



3. … Ke6
4. c6 Kd6
5. cxb7 Kc7



ここまでは絶対手の応酬である。
ここでもし、白が (6. bxa6??) と指すと、黒に (6. … h5!) とされ、



これではドローポジションになってしまう。なので、その前で立ち止まって考えることが大切である。

6. b6+!!
これで白勝ち
6. …Kxb7
7. h5! 1-0



これでドローポジションにされずに済む。

最初の時点で 6. b6+! まで読んでおく必要はないが、6. b6+! の様な急所の手前で立ち止まって考える
癖をつけることが大事である。これは Common Sense にも繋がる。

Must Must Must と指していき、5. cxb7 Kc7 で初めて枝分かれになるので、そこで考える。
大体みんな枝分かれに気づかずにどちらかの道を選択してしまう場合が多い。
枝分けれを見つけることが肝要である。

読んでいく内にあまり先を読もうとし過ぎて焦ってしまうと、後で疲れてミスをする。

*****ブランチ(枝分かれ)を発見する為のトレーニング***************

@ 1. c5
A 1. Bxe5
B 1. Kf2

(前述の通り)以上3つの候補が挙げられるが、駒を取る手は必然手の応酬になる。
GMは大体取る手を最初に考える。
そして、取る手に関する読みは積極的な手にしなければならない。

5. cxb7 Kc7 の時点で白の負けは無い。
ここでまず取る手を考えるが、こういう場合、相手の気持ちになって、相手はどうすれば良いのか考える。
そうすることにより、相手の良い手を防ぐ手が見えてくる。

6. b6+!! Kxb7
7. h5!
ここまでくれば、もう読む必要はない。

*************************************************************

エンドゲームは枝分かれの勉強にすごく良いし、時間も取られない。


第二部 GMバブーリン氏によるエンドゲームレクチャー その2

ポジション U



このポジションはどうだろう。候補として以下の3つの手が有力である。
@ 1. Kb8
A 1. b4
B 1. b3

まず、@は (1. Kg8? b4!) と、ポーンを突き捨てられてドロー。
次に、Aは (1. b4 Ka6!?) と、お見合い(= Opposition)の連続となりドロー。
よって正解は、B 1.b3!!

1. b3 Ka5
2. Kb7?? b4!
3. c4
stalemate 1/2-1/2



これもドローです。・・・いいえ、違います(笑)。このゲームに勝つためには焦らないことが肝要です。

1. b3 Ka5
2. Kb8! b4
3. c4 Kb6



以下続いて・・・

4. Kc8 Kc6 5. Kd8 Kd6 6. Ke8 Ke6 7. Kf8 Kf6 8. Kg8 Kg6 9. Kh8



ここで、もし黒が 9. … Kh6 としてしまうと、Cポーンの昇格を止める為に必要な範囲(正方形の赤枠)
から出てしまいます。よって、さらに続いて・・・

9. … Kf6 10. Kh7 Kf7 11. Kh6 Kf6 12. Kh5 Kf5 13. Kh4 Kf4 14.Kh3



ここでも、もし黒が 14. … Kf3 として赤枠から出てしまうと、やはりCポーンの昇格を止めることができません。
最後はいろいろとやり方がありますが、最終的には・・・

14. … Kf5 15. Kg3 Kg5 16. Kf3 Kf5 17. Ke3 Ke5 18. Kd3 Kd6
19. Kd4 Kc6 20. Ke5 Kc5 21. Ke6 Kb6 22. Kd5



といった具合に、白のキングがポーンの島に到着し、黒はもはやなすすべがありません。

1-0


第三部 GMバブーリン氏による同時対局 ベストゲーム

[Event "Simultaneous by GM Baburin in Hamamatsu Chess Circle"]
[Site "Hamamatsu"]
[Date "2009.5.22"]
[Round "-"]
[White "Baburin, Alexander (IRL)"]
[Black "Kawamura, Shinji (JPN)"]
[Result "1-0"]
[ECO "Sicilian, Rossolimo Variation (B31)"]
[WhiteElo "2541"]
[PlyCount "55"]

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 g6 4. O-O Bg7 5. Re1 e6 6. c3 Nge7 7. Bf1 Qc7 8.
d4 cxd4 9. cxd4 d5 10. e5 O-O 11. Nc3 a6 12. Bg5 b5 13. Rc1 Bb7 14. Qd2
Rac8 15. Bh6 Qb6 16. Bxg7 Kxg7 17. h4 h5 18. g3 Nf5 19. Rcd1 Rc7 20. Bh3
Nh6 21. Ne2 Rfc8 22. Nf4 Na5 23. Nxh5+ gxh5 24. Qg5+ Kh7 25. Qf6 Ng4 26.
Bxg4 hxg4 27. Ng5+ Kg8 28. h5 1-0 (for example if Qc6 29.h6)


追加報告 その1(名古屋オープン2009へ)

名古屋オープン2009初日。(レクチャー翌日)
HCC代表は、前夜にマスター達を送り届けた浜松市中心部にあるホテルへ彼らをお迎えに行き、3人で一緒に在来線で
名古屋まで行きました。
そこで、もう一人のマスターIMサム・コリンズ氏(当年度の全日本チャンピオン)と待ち合わせる予定でしたが、事情が変わり、
FM渡辺暁さんはサムさんを待ち、私とGMバブーリンさんは、荷物を預かってもらう為にチェックインするべく、先に彼ら3人が
当日泊るホテルへ向かいました。

その後、私とバブーリンさんは、ホテル1階のレストランで昼食を取り、午後の第一試合開始までまだ1時間弱あることと、
ホテルから会場への道中に名古屋城があることを幸いに、私の提案で急遽名古屋城を観光することにしました。
ただ、観光といってものんびり見ている時間は無い為、正門から入って西之丸から本丸と足早に通り過ぎると、天守閣の
最上階まで登り詰め、今度は二ノ丸を通って東門から外へ出て、会場となる「愛知県スポーツ会館」へ向かいました。
バブーリンさんも矢継ぎ早に写真を撮る羽目になってしまい申し訳なかったなと思いますが、「日本人がヨーロッパへ来ると
パシャパシャ写真を撮るが、私も人のことを言えないな。」というニュアンスのことを言って結構撮っていたので、それなりに
楽しんでもらえたと信じています。

会場へ着くと、外で暁さんとサムさんが既に待っており、私は無事役目を終えました。
ここで、普通ならこれでやっと大会に集中できるなと(失礼ながら)意気込むところですが、前日は早めに寝なければいけない
ところを、レクチャーのリポートをタイムリーにアップする為に夜更かしし、当日も早起きした為に極度の睡眠不足に陥っており、
今ひとつ気持ちが乗らない。しかも、初戦でいきなりIM(今大会もGMと共に優勝)と当たることに。
ただそこは、「睡眠不足だとサクリファイスが出やすい。」という前日のバブーリンさんの言葉を若干期待しつつも、結果は惨敗。
変な手を連発して瞬殺されました(笑)。まぁ、早く終わった分の時間を観光に費やしてくれたみたいなので良しとしましょう。
そして、次の試合はドロー。今思えば、いつになく最初からドローでいいやという指し方だったと思います。

とにかく、いろんな方にとってスペシャルな週末だったことは間違いないでしょう。


追加報告 その2(「Chess Today」誌に掲載)

この度は、世界初のEメールチェス新聞「Chess Today」誌の編集長であるGMバブーリン氏をお招きし、レクチャーをして頂きました。
そして、5月28日付け記事の最後のページに、記念撮影の写真付き(代表が当HP掲載の写真と同じ写真を送付した為)で、
当サークルを「浜松チェスクラブ」として紹介して頂きました。
また、5月30日付けの記事には、「Chess in Japan, Part2」(Part1は全国大会関連記事)として、名古屋オープン2009の紹介の前に、
上記浜松におけるレクチャー&同時対局に関する記述がありましたので、以下に掲載します。
 ※なお、5月27日及び28日の記事は、日本チェス協会のHPからご覧になれます。

(以下原文)
At this stage I have been in Japan for 10 days. I've done a lot of sightseeing and some chess stuff too.
Last Friday I gave a lecture (Kindly translated by Akira Watanabe) and a simul.
in a small chess club in Hamamatsu, a city wiht about 800,000 people.
While there, I was treated by the club members to famous local dumplings.
I know a thing or two about dumplings myself and can testify that Hamamatsu deserves its fame for them!

(以下訳文)
>現在のところ、私は日本に10日間滞在しています。私は多くの観光とチェスの対局を行いました。
>先週の金曜日、私は講義(渡辺暁氏により丁寧に翻訳されました)と同時対局を、
>浜松の小さなチェスクラブにて行いました。浜松市は約80万人の人々が住んでいます。
>そこで私は、クラブのメンバーより地元で有名な団子料理(浜松餃子のこと)をご馳走になりました。
>私は団子料理に関して自分でも1つ、2つ知っています(生まれ故郷のロシアにもあるらしい)ので、
 浜松がそれら(団子料理)の誉れに値すると証明できます。

設立から僅か半年余りで早くも世界デビュー・・・をしたかどうかはわかりませんが、いずれにしてもすごいことだと思います。


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